レンガの壁をつたいながら長い道を抜けると、やがて突き当たりに光が見える。
地下道は古城の裏手へと繋がっていて、地上に出た先は農村の近くだ。
日の光に安心したのか、ヴォレンスは手を離して背伸びをした。
「んんー、もうゴールかぁ。おたから、なかったな」
「そうだね。ここはどこだろう」
木の生い茂る森は方角がわからない。
古城の隠し通路を通れば帰れるはずだが、再び引き返しても明かりはつかず、迷路のように入り組んだ道は光の道標なしで戻るのは難しそうだった。
外部からの侵入ができないよう、なにかしら細工が施されているようだ。
そのとき、近くの茂みから葉の揺れる音がした。双子の白い耳が小さな音を拾う。
現れたのは汚れた身なりの男性だった。腰には護身用の短剣をさしており、体型は痩せ型で三十代くらいに見える。
「やった、ひとだ! あのおじさんにかえりみちをきこう」
「まって、ヴォレンス。なんかへんだよ」


