勢いよく滑って転がるヴォレンスに、シルヴァンは驚いて小さな手で目を覆った。
やがてゆっくり指の間から様子をうかがうと、頭を抑えて唸る兄が見える。
しかし、それ以上に気になるものが目の前にはあった。
「ヴォレンス! みて」
「んぁ……いてて……、なに?」
「〝ひみつきち〟へのとびらだ」
ずれたカーペットの下には、明らかに人工的に作られた妙な切れ込みがあった。ふたりがかりで取っ手を引き抜いて持ち上げると、地下へとのびる階段が続いている。
興奮したヴォレンスが頬を赤く染めて声を上げる。
「わぁ! かくしとびらだ!」
「すごい、えほんみたい! いってみようよ、ヴォレンス!」
双子は真っ暗な地下へと足を踏み入れた。
湿っぽい空気が毛並みをなで、階段の下に向かうにつれてカビ臭い。どうやら、長い間人が出入りしていないようだ。
レンガ造りの壁と階段にはところどころコケが生えており、触るとしっとりしていて気持ち悪かった。


