感動で体が震える。そりゃあ、四歳ともなれば喋っても不思議ではない。初対面の僕を警戒しているようだ。
主は子ども達に目を向けながら続けた。
「お前に噛みついたほうが兄のヴォレンス。足にくっついているほうが弟のシルヴァンだ」
可愛らしい見た目とはまた違って、王族らしい高貴な名前だ。この子たちもあと数年したら、主のようにたくましい青年に成長するのだろう。
病に冒されていたとき、「伴侶などつくるわけがない」と怒鳴られた記憶が蘇る。
呪われた王族の血を残すつもりがなかった彼が、心から愛する妻と息子達に囲まれる未来がくるとは感慨深い。
そのとき、主が双子を地面へ下ろす。
「お前達に書庫は退屈だろうから古城の庭で遊んでおけ。あとで迎えに行く。……好きにしていいが、俺に声の届くところにいろ」
父親の言葉を聞いて元気よく駆けだすふたりは、庭に向かって一直線だ。白い毛玉が芝生の上を無邪気に転げ回っているのは見ていて飽きない。
「解毒薬ができたら呼べ」
「承知しました。さて、僕も薬室に向かいますかね」
新たな仕事を請け負った後、ヴォルランの親子と別れ、僕は植物園のログハウスへと向かった。
《ドミニコラ視点・終》


