ふわふわした毛並みの小さなシルエットが、雄々しい主の背中と太ももにしがみついている。
よく見ると美しい銀髪から獣の耳が生えており、触り心地が良さそうな尻尾が揺れていた。
主は表情ひとつ変えずにクールに言い放つ。
「息子だ」
その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走る。
いや、幼少期の彼とよく似た子どもを見たときから、そうではないかと薄々感じていた。
六年会わない間に、王子が誕生していたなんて。
「こんな大事なことを、なぜすぐに教えてくださらなかったのです!」
「つい最近まで諸外国をふらふら放浪していた貴様が悪い」
「ひどい! 主に頼まれて薬草の調査に行っていたのではありませんか!」
数年がかりでエピナントを離れ、さらには伝書鳩でたまに届く手紙も鞄に入れっぱなしにして、存在を忘れていたこちらにも非はあるが、重大なニュースが耳に入らなかったのは驚きだ。


