悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】


 ふわふわした毛並みの小さなシルエットが、雄々しい主の背中と太ももにしがみついている。

 よく見ると美しい銀髪から獣の耳が生えており、触り心地が良さそうな尻尾が揺れていた。

 主は表情ひとつ変えずにクールに言い放つ。


「息子だ」


 その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走る。

 いや、幼少期の彼とよく似た子どもを見たときから、そうではないかと薄々感じていた。

 六年会わない間に、王子が誕生していたなんて。


「こんな大事なことを、なぜすぐに教えてくださらなかったのです!」

「つい最近まで諸外国をふらふら放浪していた貴様が悪い」

「ひどい! 主に頼まれて薬草の調査に行っていたのではありませんか!」


 数年がかりでエピナントを離れ、さらには伝書鳩でたまに届く手紙も鞄に入れっぱなしにして、存在を忘れていたこちらにも非はあるが、重大なニュースが耳に入らなかったのは驚きだ。