《ドミニコラ視点》


「主、古城に来るのは久しぶりですね」

「ああ。ドミニコラも息災でなによりだ。皆に変わったところはないか」

「エルフの生きる時間は遅いですから、使用人たちは変わりありませんよ。城壁のツタが伸びたくらいでしょうか」


 主がブルトーワ国の結婚式場からエスターさんを連れ去った日から六年の月日が流れた。

 五月のある日、馬車で古城へやってきた主は以前見たときよりもさらに凛々しくなっていたが、外見は若々しいままで美貌は健在である。

 僕はここ数年公務で近隣諸国に出ていたため、しばらく主と会話をする機会はなかった。

 前に顔を合わせたのはいつだったか。彼の結婚式に参列したときじゃないか? そうだ、ボナが号泣していたっけ。

 思い出に浸りながら尋ねる。


「エスターさんは一緒ではないのですか?」

「エスターはある仕事に追われていてな。古城にも行きたがっていたが、多忙なんだ」

「もしかして、巷で噂の密輸騒ぎでしょうか」