【side 百虎】
「寝ちゃった?」
「ああ……」
すー、すーという可愛い寝息が聞こえて、口元が緩む。
夜明に体を預けて眠っている姿が微笑ましくて、穏やかな気持ちになった。
泣き疲れちゃったみたいだな……。
さっき、ありがとうございますと何度も言いながら泣いていた鈴ちゃん。
別にたいしたことなんて何もしてないのに、鈴ちゃんは大げさなくらい感謝していた。
彼女の過去の記憶を見たあとだから、その理由も頷ける。
「鈴ちゃんの泣き方、なんかかわいそうになるね」
ずっと見られまいと顔を隠して、声を押し殺して泣いていた。
肩を震わせる姿に、「大丈夫だよ」としか言えなかった自分が情けない。
こんな泣き方するなんて……泣くことも許されなかったんだろうな。