婚約者になれる可能性が少しでもあるなら……その座はあたしのもの。


鈴蘭になんて、渡さない……!


「彼女はあなたのような高貴な方にふさわしい女性ではありません……!」


涙目でそう言って、黒闇神様のほうに駆けよる。


この人はきっとなんにも知らないんだわ、鈴蘭の噂を。


鈴蘭の数々の噂を知れば……百年の恋も冷めるはず。


まあ、噂なんて全部あたしの作り話だけど。


言葉を続けようとした時、黒闇神様があたしを睨みつけた。


「おい、そいつをどうにかしろ」


は……?


固まっていると、あたしのことをノワールの生徒たちが取り囲んだ。


「えっ……ちょっ……!」


腕や肩を掴まれて、そのまま大講堂からつまみだされる。


まるでのけもののような扱いに、怒りが込み上げた。