魔王子さま、ご執心!②~最強王子と、 甘すぎる溺愛婚約生活が始まる~

それに、俺はお前にそんな笑顔を向けられる資格はない。


こいつの調査書を見たとき、夜明さんを騙している最低な女だって決めつけて、秘密裏にこいつを学園から追放してやろうとさえ企んだんだ。


それなのに……。


「冷然さんがいてくれて……すごくすごく助かりました」


気を許しきっている笑顔に、心臓がひどく痛んだ。


「……もういいから黙れ」


突き放すような言い方になったのに、少しも嫌な顔をせずに黒板に視線を戻した双葉。


まるで、俺の悪態の理由もわかっているみたいな態度。


あれだけ劣悪な環境で育ったくせに……こいつは人を疑うことを知らないのか……?


お人好しを通り越して、バカだろ……。


こんなバカで――純粋な人間を見たのは、初めてだった。