「あなたは、黒闇神夜明としての彼ではなく、何者でもないあの人を好きになってくださった」


司空さんは、そう言って優しい笑みを向けてくれた。


「夜明にとってそれは、奇跡のようなことなんです」


奇跡……。


「遅くなって悪かった」


車のドアが開いて、夜明さんが戻ってきた。


私の隣に座って、「出せ」と伝えた夜明さん。


車が発進し、私は恐る恐る夜明さんのほうを見た。


「あの、両親とはどんなお話を……」


夜明さんが何を聞かされたのか、それがどうしても気になった。


「鈴蘭を貰うと改めて挨拶をした。それだけだ」


口角を上げて、優しく頭を撫でてくれた夜明さん。


「そう、ですか……」


少しだけ安心して、胸を撫でおろした。