ァーー…
「ん?」
「浮田にも、聞こえた?」
「うん」
親猫かも…。
彼は仔猫をそっと抱き上げると、声のしたほうに視線を移した。
彼の腕の中で、ミャァと仔猫が反応する。
彼は鳴き声を頼りに数歩進むと、仔猫を安全な場所に下ろした。
「浮田、こっち」
手招きする彼のあとについて物陰に隠れ、息をひそめて様子を窺う。
心臓の動きは、どんどん速くなる。
チラリと見た彼もまた、緊張した面持ちをしていた。
「……ぁ、」
しばらくして一匹の成猫が姿を現した。
ゆっくりと、辺りを警戒しながら仔猫に近づいた成猫は、クンクンとにおいを嗅いだあと、仔猫の首の後ろを咥え、持ち上げた。
もしかしたら、「ありがとう」って。
そんな意味を込めて、こちらを見たりして。
けれど親猫は、一度も振り返ることなく、仔猫とともに姿を消した。



