彼の人差し指が仔猫の頭に乗せられる。
その細くて長い指に、一筋の赤。
「指、切れてる」
「ほんとだ」
「待って。たしか、」
スクールバッグの中からポーチを取り出す。
たしか、絆創膏が入っていたはず。
「へぇ」
「なに?絆創膏も意外だって言うの?」
「うん」
「……あぁ、そう」
「貼ってよ」
彼がサラリと言うものだから、私もすんなり、うん、と返事していた。
よく見ると、彼の差し出した腕には、いくつもの細かな切り傷があった。
これじゃ、足りないでしょ。
手にしていた一枚の絆創膏を見つめていると、彼が捲り上げていたシャツの袖を元に戻した。
「ほら。はやく貼ってよ」
人差し指を、私のすぐ目の前まで持ってくる。
よく見たら、シャツも。ズボンも。
まだ新しそうなスニーカーだって。
汚れていても、彼は気にも留めない。



