仔猫を片手に抱き、斜面を上ってくる彼。
私はおもいきり両手を伸ばして、彼を待った。
「おねがい」
「うん」
広げた手のひらに乗せられた、仔猫。
ふわふわの、小さな命。
「落っこちなくて、よかった。……って。なんで泣いてんの?」
落とさないように、滑り落ちないように。
斜面を上り終えた彼が驚く。
「だって、……優心が。…優心が、やさしいんだもぉん…っ」
何故だかわからないけど。
涙が止まらない。
小さな命が、私の手の中にあって。
この小さな命を、彼が救った。
彼の優しさに、触れてしまったからかもしれない。
「落ち着いた?」
彼の問いかけに、何度も頷いて見せた。
「急に泣くなよ。びっくりするだろ」
「だって、……」
道路に胡座をかき、できた窪みに仔猫を座らせる彼。
その隣に座り、仔猫を眺める私。



