橋の上から下を覗き込んだ彼が、いた、と指をさす。
斜面に生い茂る草の隙間。
小さな白色が、モゾモゾと動いた。
「このまま放っておいたら、落ちちゃうかも」
小さな川ではあるけれど、転げ落ちでもしたら大変だ。
どうしよう、と。
私が口を開くまえに、彼が長い足でガードパイプを跨いだ。
「え、……」
斜面を、仔猫を刺激しないように注意深く下りていく。
ゆっくり、ゆっくりと。そっと、そうっと近づいて。
そして。
「よし。つかまえた」
彼の大きな手のひらに、すっぽりと収まってしまうくらい小さな仔猫。
あぁ……、よかった。
「浮田!」
彼が、橋の上からただ見守ることしかできずにいた私を見上げている。
「な…、なぁに?」
「猫、触れる?」
「うん、平気!」
「じゃあ、受け取って」



