恋愛☆マニュアル



「整理券でも配ってるの?」って。
思わず訊いてしまいそうになる。

さっき目にした、あの列のように。
「彼女」になりたくて、順番待ちをしている人はたくさんいる。
彼はその中から選べばいいだけ。
だから、なのか。

彼の恋は、いつも長続きしない。



「……なんか、聞こえない?」
「え?」

通学路の途中にある、小さな川に架かる橋。
その橋を渡りかけたとき、彼が足を止めた。
人差し指を唇にあて、周囲の音に耳を傾けている。

「ほら」
「………」


ミャー、ミャー、ミャー…


「あ。」
「やっぱり、」
「仔猫…?」
「だね」


か細く頼りない鳴き方は、まだ小さな証拠だ。
何処から聞こえてくるんだろう。
辺りを見まわすけれど、姿は確認できない。