「整理券でも配ってるの?」って。
思わず訊いてしまいそうになる。
さっき目にした、あの列のように。
「彼女」になりたくて、順番待ちをしている人はたくさんいる。
彼はその中から選べばいいだけ。
だから、なのか。
彼の恋は、いつも長続きしない。
「……なんか、聞こえない?」
「え?」
通学路の途中にある、小さな川に架かる橋。
その橋を渡りかけたとき、彼が足を止めた。
人差し指を唇にあて、周囲の音に耳を傾けている。
「ほら」
「………」
ミャー、ミャー、ミャー…
「あ。」
「やっぱり、」
「仔猫…?」
「だね」
か細く頼りない鳴き方は、まだ小さな証拠だ。
何処から聞こえてくるんだろう。
辺りを見まわすけれど、姿は確認できない。



