恋愛☆マニュアル



「ごめん、」

片付けを終え、体育倉庫の扉を閉めたとき。
撮影会を終えた彼が、申し訳なさそうな顔をしてやって来た。

「べつに、いいけど……。いつも大変だね」

肩をすくめて見せると、彼もまた、私を真似て肩をすくめた。


「もう、終わったし。帰っていいよ」
「浮田は?」
「鍵を返したら、帰る」
「じゃあ、一緒に帰ろう」
「…………ん?」



何故か、イケメンと一緒に帰ることになってしまった。

彼と肩を並べて歩くことに、憧れを抱いている人はたくさんいる。
誰かに目撃されたら大変だ。
きょろきょろと辺りを見まわして歩いていた私は、頭ひとつぶん大きな彼を見上げ、ため息をこぼした。

「なに?」
「ううん。なんでもない」


たしか、一週間ほど前だったと思う。
二ヶ月付き合った彼女と別れた、って噂で聞いた。
その前は、一ヶ月…だったかな。

付き合っては、別れて。
また付き合っては、すぐ別れて。

そしてまた、新しい恋をする。