「中学のとき、すげぇ好きな子がいて。その子と、付き合うことができたんだけど」
目を伏せた彼が話す思い出は、彼のものであって、私のものではない。
私の知らない過去が存在するのは当然のこと。
それでも。彼が思い浮かべた彼女のことを勝手に想像しては、勝手に傷ついていた。
『すげぇ好き』って、どのくらい?
付き合うって、どんなふうに?
風で揺れた黒髪を指で払う彼の仕草に目を奪われながらも、知りもしない彼女に嫉妬していた。
彼は何度か瞬きしたあと、話しを続ける。
「でも、すぐダメになった。思ってたのと違うって。物足りないって言われて、フラれた。
付き合うこと自体が初めてだったし、何もかもが順調にいくとは思ってなかったけど。そんなこと言われるなんて想像してなかったから。なんか、ショックで」
しばらく立ち直れなかったと、小さく笑う。
彼の完璧すぎる見た目ゆえ、期待してしまうんだ。
自分の理想を求め、押しつける。
そのことが彼を傷つけた。



