サイン会とか。握手会とか。
行ったことないけど、こんな感じなのかな。

球技大会終了後。
長い列を横目に、バレーボールの入ったボールカゴを押しながら、ふと、そんなことを思った。


彼氏にするなら、外見より内面で選びたい。
私、浮田 音(うきた のん)。高校二年生。

列に並ぶ彼女たちのお目当ては、田舎には似つかわしくないほどのイケメン。
同じクラスの、戸山 優心(とやま ゆうしん)


「戸山くん、一緒に撮って」
「わたしも撮りたい!」
「優心、もう一枚!」

入学当初からそうだった。
彼のまわりには、いつも女の子がいた。

入学式、オリエンテーリング、球技大会、体育祭、文化祭などなど。
彼のいるところには、必ずと言っていいほど列ができる。
学校行事特有の雰囲気に、浮かれたくなる気持ちもわかるけど。
片付けもそっちのけで撮影会とか。

「……ありえないんだけど」

彼もいちおう、私と同じ実行委員なのに。