窓際の席。
左腕を枕にした彼の寝顔を眺めるべく、前の席に静かに腰を下ろした。
やわらかそうな黒髪。
バランスよく生え揃った睫毛。
スッと通った鼻筋。
覗き込むようにして見た彼の寝顔は、息を呑むほど美しい。
トクントクンとリズムを刻む私の心音に、彼の静かな寝息が乗っかれば、それだけで、指先がビリビリと痺れてしまう。
机の上で、なんとなくの角度で曲げられた右腕。
丸まった背中。
休み明けに短くなってた襟足。
細く長い指。
「………ぁ、」
あの日、絆創膏で覆った傷が消えてなくなっていることに気づく。
胸の奥のほうが、きゅっとなって。
傷があったであろうその場所に、無性に触れてみたくなった。
そろそろと伸ばした右手。
一瞬、躊躇したものの、指先の要求に、素直に応じることにした。



