想像していたよりも、毎日が穏やかに過ぎていく。
女の子たちからの嫌がらせも覚悟していたけど。
今のところ、とくになにも。
逆に、なにも起こらないことが怖いと思うくらい。
でも。
……そっか。
彼女たちも知っているんだ。
彼の恋が、長続きしないことを。
少し待てば、また。
自分たちにチャンスが訪れるのだと、わかっているから。
「浮田、ごめん。今日、遅くなりそうだから、先に帰って」
「あ、…うん。わかった」
「優心、今日は?」
「あ、ごめん。約束があって、」
「……そっか。じゃあ、」
付き合っていても、私たちの関係は以前と変わっていないように思う。
同じ教室にいるのに、大した会話もないし。
お互いがお互いの友だちと過ごしているし。
お弁当だって、一緒に食べることはないし。
放課後もまだ、一緒に過ごしたことがない。
「え。あの告白は、幻覚だった?」
友だちにも訊かれたくらいだ。



