突然だが、私、黶木 影理(アザキ カゲリ)はとんでもなく焦っている。
理由は単純。
追われているのである。
「カゲリちゃーんどこぉーーー?」
「アザキ君、どこだ?返事をしろ」
「あれ、いないぞ?」
私は木の上から下を見下ろす。
…私を追っているのは…不良、生徒副会長、不良、優等生、不良、優等生…
…いやいや、何でお前ら、仲良く私を探してるんだよ…
と私が思った瞬間、
「此処か」
低く美しい声が、私の耳元で響いた。
バッと振り返る。
透明感のある美しい黒髪の下に見えるのは、鋭い切れ長の目。
「探したぞ…?」
形の良い唇がそう良う。
私は思った。
(…どこで選択を間違えたんだ…?)