部屋に冬子が薄っすらと笑みを浮かべながら入ってくる。妖艶な雰囲気を纏う彼女の登場に、部屋は一瞬にして静かになった。冬子の手には数枚の写真がある。

「こんな卑怯なことをして好きな人を手に入れようなんて、とんだ女狐ね」

冷たい視線を冬子は心愛に向け、写真を勢いよくばら撒く。そこには、椿芽を脅迫している心愛や五十鈴に無理矢理迫る心愛が映っていた。

「何なのよ、この写真!盗撮じゃない!」

心愛は顔を真っ赤にしながら冬子を睨むも、すぐに記者たちに囲まれてしまう。その様子を見て冬子が五十鈴たちに目配せをし、五十鈴は椿芽の手を掴む。

「行こう!」

「うん」

椿芽と五十鈴は部屋を飛び出し、ホテルから出る。二人の頭の中には、一緒に見た恋愛映画が浮かんだ。無理矢理好きでもない人と結婚させられそうになるも、好きな人と逃げ出すというお話のものだ。

「ねえ椿芽、ここは空けておいてくれる?近々渡したいものがあるから」

そう言い五十鈴が椿芽の左手の薬指にキスを落とすと、椿芽の顔は一瞬にして赤く染まる。だが、その顔はすぐに幸せそうな笑顔になっていくのだ。

「もちろんです!」

秘密の恋は、きっともうすぐ秘密ではなくなる。だが、二人の恋と愛はこれからも育っていくのだ。