相思相愛

 それは体育館に入る前、クラスの名簿表を見たときだった。
 名簿表は出席番号順で、男の子→女の子の順番に記名されていた。自分のクラスのこの名前を一通り見てたら、どこかで見て聞いた名前があった。
「いたっていうか、昔の友達の名前があった。でも…」
 でも、何かがおかしかった。その違和感にわたしはすぐ気づけたけれど…。
「でも?」
「多分人違いだったんだと思う」
 そもそも昔の友達だとして、名字も曖昧だ。下の名前は覚えていたけれど、上があっているかと言われれば少し怪しい。
「えー?面白くないの。もしその子が本人だったら運命の再会ってことでしょ?」
「まあ、向こうも覚えてるかわかんないけどね」
 苦笑を浮かべた私に優菜ちゃんは「覚えてるよ絶対。香織ちゃんかわいいもん」と自信満々に言ってきた。ほんの数十分間まえに知り合ったとは思えないほど親しくしてくれて嬉しい。
 わたしは少し恥ずかしくなり照れ隠しに笑った。
「優菜ちゃんこそ可愛いんだから、モテたことあるんじゃないの?」
「私?ないない。テンション高くてうるさいだけ」
 ヘラヘラと笑いながら自虐をする優菜ちゃん。でもこういう人って影でモテてるんだろうな。 
 私なんてモテたことなんてない。交際経験もないし、いつも一方通行の恋情。片道切符なのだ。一度でいいから費両思いの恋をしてみたい。
「笑顔が好きな人多いと思うよ?」
「じゃあ高校だったらモテるかもね!」
「応援してるよ」
「香織ちゃんこそ頑張ってね!」
 優菜ちゃんの素敵な笑顔を受け取り、私も不思議と自然な笑顔が出る。