相思相愛

「どうした?」
 葵くんが、楽しみにしていた…?そんなの嘘に決まっている。葵くんのお母さんがその場の成り行きでついた嘘に決まっている。そんな戯言に私は騙されない。
「な、なんでもないよ」
「なんでもないやつの汗の量じゃないぞ」
「アハハ…」
 頬をかく手はかすかに震えている気がした。
「ふたりとも。デザート頼みんなさいよ」
 お母さんの言葉で、今度は真剣にメニューを見る。プリン、ショコラケーキ、パフェ、ショートケーキ、王道のものが多い。どれにしよう。
 葵くんも決めかねているように見えた。何度かメニューを往復して見たあとやっとのことで頼むものを決めることができた。バタンと閉じると葵くは既にメニューを閉じていて私を待っている状態だった。
「悩みすぎだろ」
 頬杖をついている葵くんに対して返す言葉もない。
「だって。全部美味しそうだったんだもん」
 葵くんは呼び鈴を鳴らした。駆けつけてくれた店員さんに注文をしたんだけど…。
「では少々お待ち下さい」
 会釈をして、恐る恐る葵くんの方に目をやる。
「合わせてないからね」
「まだ何も言ってねえよ」
「だってどうせいうと思ったんだもん」
「どうせってなんだどうせって」