「もう決まったのか」
不意に目が合い、思わず形がビクッとなって目線を無理矢理メニューに戻す。おろした視線は頼むはずもない酒類に行ってしまった。
「えと…ドレニシヨウカナ」
「決まってるなら、呼ぶぞ」
葵くんが息を一つ吐いた。
降参。私はメニュー表を寝かせた。そして元の場所に戻した。
チャイムを鳴らし、来てくれた店員さんに各々注文をした。
「それで…。なんで同じなんだよ」
「知らないよ」
到着した料理を見て葵くんは両肘を机についた。繋いだ手首に顔を置き、尋問されている気分だ。
「合わせ」
「てない」
文字通り先読みした。
「あの一瞬で合わせる意味がないよ」
「それにしてはさっきから合いすぎじゃないか?」
葵くんは顎に手を当てて困惑している。
「言われてみればそう、だけど」
わたしは、合わせていない。合わせたところでなにもないから。まず彼と合わせて何が起こると言うんだろうか。馬の一つも合わないからこうして衝突しているわけで、合うのだったらここまでバチバチしない。
「肘立てるの、行儀悪い」
私は運ばれてきていたトマトスパゲティにフォークを回す。いつも頼んでいるものなのにどうも味が違う。なんというか、居心地の問題か、それとも偶々味が違うのか。後者はないと見ていい。前と違うといえば前者。
指摘したことに対して謝りもせず、無言で私と同じものを食べ始めた。隣のテーブルでは世間話が繰り広げられているというのに、こっちはまるで通夜前みたい。
でも、なんでだろう。今の葵くんは…違和感がある。もちろん幼稚園の彼とはもはや180度変わってしまっているけど、そこじゃなくて、なんだろう。態度…っていうか、立ち居振る舞いっていうか。どことなく違和感がある。どこか無理しているような、私の目にはそう写った。
無言のパスタは、味を堪能するのにちょうど良かった。ほとんど同じタイミングで食べ終わったので、暇。正直食べ終わったら帰るのかと思ってた。けどそんなことなくて、私達が食べて、お母さんたちも食べ終わったのに、一向に帰る気配がない。こりゃ長くなりそう。
「ね、ねえ、今度さ」
なんとか話をしないと。お母さんたちの気が、こっちに向くまえに。
「勉強、教えてよ」
優菜ちゃんに、葵くんは頭がいいと聞いていたのを思い出した。優菜ちゃんありがとう。
「嫌だ」
「な、なんで。頭いいんでしょ?」
息を吐くように否定された。相手にされてないみたいだ。その証拠に携帯をつついている。
「お前がよくいる女子に教えてもらえばいいだろ。頭いいって聞いてるぞ」
多分それは宗太郎くんからだろう。ホントなんであんな短時間で仲良くなれるの…。
不意に目が合い、思わず形がビクッとなって目線を無理矢理メニューに戻す。おろした視線は頼むはずもない酒類に行ってしまった。
「えと…ドレニシヨウカナ」
「決まってるなら、呼ぶぞ」
葵くんが息を一つ吐いた。
降参。私はメニュー表を寝かせた。そして元の場所に戻した。
チャイムを鳴らし、来てくれた店員さんに各々注文をした。
「それで…。なんで同じなんだよ」
「知らないよ」
到着した料理を見て葵くんは両肘を机についた。繋いだ手首に顔を置き、尋問されている気分だ。
「合わせ」
「てない」
文字通り先読みした。
「あの一瞬で合わせる意味がないよ」
「それにしてはさっきから合いすぎじゃないか?」
葵くんは顎に手を当てて困惑している。
「言われてみればそう、だけど」
わたしは、合わせていない。合わせたところでなにもないから。まず彼と合わせて何が起こると言うんだろうか。馬の一つも合わないからこうして衝突しているわけで、合うのだったらここまでバチバチしない。
「肘立てるの、行儀悪い」
私は運ばれてきていたトマトスパゲティにフォークを回す。いつも頼んでいるものなのにどうも味が違う。なんというか、居心地の問題か、それとも偶々味が違うのか。後者はないと見ていい。前と違うといえば前者。
指摘したことに対して謝りもせず、無言で私と同じものを食べ始めた。隣のテーブルでは世間話が繰り広げられているというのに、こっちはまるで通夜前みたい。
でも、なんでだろう。今の葵くんは…違和感がある。もちろん幼稚園の彼とはもはや180度変わってしまっているけど、そこじゃなくて、なんだろう。態度…っていうか、立ち居振る舞いっていうか。どことなく違和感がある。どこか無理しているような、私の目にはそう写った。
無言のパスタは、味を堪能するのにちょうど良かった。ほとんど同じタイミングで食べ終わったので、暇。正直食べ終わったら帰るのかと思ってた。けどそんなことなくて、私達が食べて、お母さんたちも食べ終わったのに、一向に帰る気配がない。こりゃ長くなりそう。
「ね、ねえ、今度さ」
なんとか話をしないと。お母さんたちの気が、こっちに向くまえに。
「勉強、教えてよ」
優菜ちゃんに、葵くんは頭がいいと聞いていたのを思い出した。優菜ちゃんありがとう。
「嫌だ」
「な、なんで。頭いいんでしょ?」
息を吐くように否定された。相手にされてないみたいだ。その証拠に携帯をつついている。
「お前がよくいる女子に教えてもらえばいいだろ。頭いいって聞いてるぞ」
多分それは宗太郎くんからだろう。ホントなんであんな短時間で仲良くなれるの…。


