相思相愛

 どうしよう。結局なんの案もでないまま当日を迎えてしまった。緊張のせいで寝れてないからクマも出来てる。
 行き馴染みのあるファミレスに集合ということらしく、私達は少し早めについてしまった。家が隣だからてっきり一緒にくるものかと思ってたから一安心。
「2名様ですか?」
「後からもうふたり来ます」
 お母さんはVサインを作った。
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
 どうも、乗り気になれない…。



 ほんの10分も経たないうちに、扉の開く、嫌な音がした。
「きたきた。おーい。こっちこっち」
 わざわざ呼び寄せないでも…。そして藤本親子がこっちに来た。
「じゃあ、子供はこっちね」
「子供って…。もう高校生だぞ」
 葵くんのお母さん。なんだかうちのお母さんに似てる。案の定、席は分けられた。ドリンクバーになんとか逃げてきたけど、そんな時間いてもなあ。
「おい。別に無理に仲良くしなくていいから」
 葵くんもドリンクバーのコップを持って来てしまった。これは予想外。すれ違いを狙うつもりだったのに。
「別に、無理してない」
「逆に言うけどな。親同士が仲いいからって、子供まで仲良くしなくてもいいだろ。子供は仲良くても親が仲良くないなんて良くある話だ」
 でも、と私は言いたかった。それじゃ、お母さんが悲しむ。なんて言えなかった。
「まず、仲良くする気なんてない」
「そ、それは私も同じ」
 いつも入れる氷も今日は入れず、ジュースも半分と少ししか入れずに席に早足で戻った。どうもおかしい、乱れる。彼といると。
「なんで同じ物…」
「言っておくけど、俺はお前がジュースを入れるところを見てないからな。たまたまだ」
 ほんとうにそうだろうか。でも確かに、私がジュースを入れたときは、葵くんグラス取ったり氷いれたりでこっちを見る余裕なんてなかったはず。じゃあほんとにたまたまってこと?
「ふたりとも、何頼むか決めたの?」
 声をかけてきたのは葵くんのお母さんだった。
「あ…」
「今から決めるよ。ちょっと待ってて」
 葵くんは慌ててメニューを取った。2枚あるから取り合いにならずに済みそうで良かった。
 葵くんはメニュー表を立てており、完全に隔てりを作った。何を思ったか私も無意識に対抗心がでて、同じようにメニューを立てた。
 少しの間メニューとにらめっこをした。とっくに頼むものは決まっていたけど、葵くんがいつ下ろすか分からなくて、それを見てからにしようとチロチロと葵くんを見ている。全国にあるファミレスだから、行ったことないというのはあまりないかもしれないだろうけど、毎回頼むメニューら限定されていくものだろう。私だけかな。それにしても、遅い。早くしないと葵くん。