「かーおるちゃーん!おっはよ」
電車を降りて改札を通るなり、後ろから元気な声とともに両肩をボンッと叩かれた。
「優菜ちゃん。おはよ」
「香織ちゃーん。宿題どう?終わりそう?」
「んん。全く。あれからほとんど進んでない」
私は首を横に振った。やばいなと思いつつ、まだ8月の始めだから大丈夫だと思っている自分もいる。
「やばいじゃん。私もう半分終わったよ」
「もうそんなに行ったの?いいなあ。私も早くしないと」
夏休みの宿題と名がついているけれど、提出はお盆明け24日にある登校日。早めに終わらせておいて損がないとわかっているのにサボってしまうのは夏休みあるあるだと思う。
「それより香織ちゃん」
「なに?」
さえずるような声は、他人の足音や声でかき消されてしまうほど。よく聞こえなかったので耳元を近づけた。
「この前葵くんを、服屋さんで見たんだけどさ」
周りをキョロキョロと見渡している優菜ちゃんの動きが止まったかと思うと、優菜ちゃんから聞こえてきたものはにわかには信じがたいものだった。
「レディースの服見てたんだけど。あの人男子だよね」
葵くんが、レディース?スラリとして、細身の彼がレディースの服?いや、おかしい。まず男子なんだから。
「男の子だよ。私とペア組んでるんだもん」
「私服見たことある?」
「いやあ…ないかな。家もドコにあるかわからないし」
あるといえば嘘になるけれど、もしあったとしてもこうごまかさないと家が近いということがバレるかもしれない。…用心すぎるかな。しかし、内緒にしている以上、バラス訳にはいかない。
「そっか。その時は制服だったし。まず葵くんのとも限らないもんね。彼女とかかもだしね」
彼女?葵くんに、彼女。確かに、レディースの服だからといって自分のものとも限らない。葵くんにだって、好きな人とか彼女くらいいるかもしれないしね。でも、なんでだろう。なんだかモヤモヤする。前向きには捉えられないような思いが、私の心なのに逆らっていま、現れている。
「香織ちゃん?聞いてる?」
「ん?なに?ごめん聞いてなかった」
「もう、しっかりしてよ?」
「ごめんごめん。それで何言おうとしたの?」
「葵くんの彼女さんってどんな人だと思う?」
「まだ付き合ってるって決まったわけじゃないのに」
そう。まだ付き合っている人がいるとは限らない。大げさに言えば確率は50%。半分半分なんだから、必ずしもソッチであるわけじゃない。
「葵くんスタイルいいからね。きっと彼女さんも可愛くて優しい人なんだろうね」
私は、優菜ちゃんの言葉に、首を動かす事ができなかった。
電車を降りて改札を通るなり、後ろから元気な声とともに両肩をボンッと叩かれた。
「優菜ちゃん。おはよ」
「香織ちゃーん。宿題どう?終わりそう?」
「んん。全く。あれからほとんど進んでない」
私は首を横に振った。やばいなと思いつつ、まだ8月の始めだから大丈夫だと思っている自分もいる。
「やばいじゃん。私もう半分終わったよ」
「もうそんなに行ったの?いいなあ。私も早くしないと」
夏休みの宿題と名がついているけれど、提出はお盆明け24日にある登校日。早めに終わらせておいて損がないとわかっているのにサボってしまうのは夏休みあるあるだと思う。
「それより香織ちゃん」
「なに?」
さえずるような声は、他人の足音や声でかき消されてしまうほど。よく聞こえなかったので耳元を近づけた。
「この前葵くんを、服屋さんで見たんだけどさ」
周りをキョロキョロと見渡している優菜ちゃんの動きが止まったかと思うと、優菜ちゃんから聞こえてきたものはにわかには信じがたいものだった。
「レディースの服見てたんだけど。あの人男子だよね」
葵くんが、レディース?スラリとして、細身の彼がレディースの服?いや、おかしい。まず男子なんだから。
「男の子だよ。私とペア組んでるんだもん」
「私服見たことある?」
「いやあ…ないかな。家もドコにあるかわからないし」
あるといえば嘘になるけれど、もしあったとしてもこうごまかさないと家が近いということがバレるかもしれない。…用心すぎるかな。しかし、内緒にしている以上、バラス訳にはいかない。
「そっか。その時は制服だったし。まず葵くんのとも限らないもんね。彼女とかかもだしね」
彼女?葵くんに、彼女。確かに、レディースの服だからといって自分のものとも限らない。葵くんにだって、好きな人とか彼女くらいいるかもしれないしね。でも、なんでだろう。なんだかモヤモヤする。前向きには捉えられないような思いが、私の心なのに逆らっていま、現れている。
「香織ちゃん?聞いてる?」
「ん?なに?ごめん聞いてなかった」
「もう、しっかりしてよ?」
「ごめんごめん。それで何言おうとしたの?」
「葵くんの彼女さんってどんな人だと思う?」
「まだ付き合ってるって決まったわけじゃないのに」
そう。まだ付き合っている人がいるとは限らない。大げさに言えば確率は50%。半分半分なんだから、必ずしもソッチであるわけじゃない。
「葵くんスタイルいいからね。きっと彼女さんも可愛くて優しい人なんだろうね」
私は、優菜ちゃんの言葉に、首を動かす事ができなかった。


