呆れたような、夏とは思えないかき氷みたいな冷たい目線が私をさして来た。前も見たような後景。全身の毛穴が開くような感覚。初めてじゃない。いつか味わったことのあるもの。
「またかよ」
呆れたような、ではなく、呆れているらしい。
「し、仕方ないでしょ。私だって狙ってやってるんじゃないんだから」
「狙ってたらもう通報してるけどな」
「そういう葵くんこそわざとじゃないの?」
「はあ?そんなわけ無いだろ」
おかしいな。少し前までこんなに言い争うような仲じゃなかったはず。彼に対して反抗してしまう自分がいる。ホントはこんなこと言いたくないだなんて、自分が1番わかっているのに、思うよりも先に口が出てしまう。
そして、ため息を一つはいた後「まあ、どっちみち一緒なんだし。行くぞ」といった。前みたいにスタスタと先を歩かれるのかと思った私は思わぬ誘いにきょとんとする。しかしすぐに状況を理解し、「わ、わかった」と返事をする。
「初めてだよね。一緒に行くの」
「勘違いすんなよ。今日はたまたまだ」
駅までの道中。聞き飽きたセミの声と、なんとも言えない気まずい空気を取っ払うべく私は口を開いた。しかしまたすぐに途切れてしまいそうな雰囲気が漂う。
「なあ、聞いたか。ご飯食べに行くって」
意外と間が少なくて、それに葵くんから話題を振られたのが意外だった。
「聞いた。どうする?」
「なにが」
「だって私達、そんなに仲良くないし」
「それがどしたんだよ」
「だって仲良く無かっ…」
「わかってる」
ひと呼吸置いて葵くんは続ける。
「仲良くないから、親たちに不仲だって思われたら嫌なんだろ」
探偵に見抜かれた犯人の気持ちが少しだけわかった気がする。何もそれらしい仕草をしたわけではないのに見抜かれたことが不思議だ。しかし特に問いかけるつもりはない。
「別に大丈夫だろ」
「でも…」
「その場の雰囲気に合わせるだけでいい。たぶんテーブルも別れるしな。俺らに注意が向くことは少ないだろ」
なるほど。それを見越してのことだったのか。でもそんなにうまくいくだろうか。例えばお母さんたちのテーブルの後ろに座るのならその案は上手くいくだろう。しかし真横なら、視界にチラチラと入り、その度に真顔の、静かな空間が広がっていたら流石に何かを言われるおそれがある。仲良くないってもし勘づかれたりしたら、折角の機会が台無しになってしまう。
「駅ついたら、バラバラになるからな」
「え、あ、わかった」
素直にうなずいた理由は、葵くんの意図がわかったから。私もなんとなくそうするつもりだったけど、駅についてからでいいやと、後回しにしていたのを先に言われただけの話。
「じゃなあ」
簡単な言葉を捨て、葵くんと別れる。とはいっても同じ道を私も辿る。だから少し間隔を開けてから行くのがベストだと思われる。見られもしないのに、いつかすぐに会う背中に、胸元で小さく手を振った。
「またかよ」
呆れたような、ではなく、呆れているらしい。
「し、仕方ないでしょ。私だって狙ってやってるんじゃないんだから」
「狙ってたらもう通報してるけどな」
「そういう葵くんこそわざとじゃないの?」
「はあ?そんなわけ無いだろ」
おかしいな。少し前までこんなに言い争うような仲じゃなかったはず。彼に対して反抗してしまう自分がいる。ホントはこんなこと言いたくないだなんて、自分が1番わかっているのに、思うよりも先に口が出てしまう。
そして、ため息を一つはいた後「まあ、どっちみち一緒なんだし。行くぞ」といった。前みたいにスタスタと先を歩かれるのかと思った私は思わぬ誘いにきょとんとする。しかしすぐに状況を理解し、「わ、わかった」と返事をする。
「初めてだよね。一緒に行くの」
「勘違いすんなよ。今日はたまたまだ」
駅までの道中。聞き飽きたセミの声と、なんとも言えない気まずい空気を取っ払うべく私は口を開いた。しかしまたすぐに途切れてしまいそうな雰囲気が漂う。
「なあ、聞いたか。ご飯食べに行くって」
意外と間が少なくて、それに葵くんから話題を振られたのが意外だった。
「聞いた。どうする?」
「なにが」
「だって私達、そんなに仲良くないし」
「それがどしたんだよ」
「だって仲良く無かっ…」
「わかってる」
ひと呼吸置いて葵くんは続ける。
「仲良くないから、親たちに不仲だって思われたら嫌なんだろ」
探偵に見抜かれた犯人の気持ちが少しだけわかった気がする。何もそれらしい仕草をしたわけではないのに見抜かれたことが不思議だ。しかし特に問いかけるつもりはない。
「別に大丈夫だろ」
「でも…」
「その場の雰囲気に合わせるだけでいい。たぶんテーブルも別れるしな。俺らに注意が向くことは少ないだろ」
なるほど。それを見越してのことだったのか。でもそんなにうまくいくだろうか。例えばお母さんたちのテーブルの後ろに座るのならその案は上手くいくだろう。しかし真横なら、視界にチラチラと入り、その度に真顔の、静かな空間が広がっていたら流石に何かを言われるおそれがある。仲良くないってもし勘づかれたりしたら、折角の機会が台無しになってしまう。
「駅ついたら、バラバラになるからな」
「え、あ、わかった」
素直にうなずいた理由は、葵くんの意図がわかったから。私もなんとなくそうするつもりだったけど、駅についてからでいいやと、後回しにしていたのを先に言われただけの話。
「じゃなあ」
簡単な言葉を捨て、葵くんと別れる。とはいっても同じ道を私も辿る。だから少し間隔を開けてから行くのがベストだと思われる。見られもしないのに、いつかすぐに会う背中に、胸元で小さく手を振った。


