相思相愛

 息ピッタリ…。周りから見たらそうなのか。実際仲良しとは言い難いような関係だけれど。
「出す足を決めてただけだから…。なんとも言えないけどね」
「そういうものかなあ」
 首を傾げる優菜ちゃんを見て、私も同じ意見だよと思ってしまう。故に曖昧な言い方になった。
「それにしても早かったね。笑っちゃいそうだったもん。ありゃ間違いなく一位ですな」
 そう言っている優菜ちゃんはフライングして笑っている。自分でもわたしってあんなに早く走れるんだなって感じたし、葵くんもあんなに興奮してたから、さぞかし早かったことだろう。
「あ、葵くんと私のペアの子帰ってきた」
 優菜ちゃんの目線の先を見てみると、葵くんと優菜ちゃんとペアを組んでいた男子がこっちに歩いてきていた。二人はすごく親しそうに話している。私達みたいに高校からの付き合いなのか、以前からそれがあったのか。
「仲いいんだねあの二人」
「そうみたいだね。なんだか意外」
「そう?」
「だって、タイプまるで違いそうじゃない?」
 葵くんは、無表情で常に怒ってそうで、大人しくて、本が好き。でも隣りにいる子は、陽気で、明るくて笑顔だ。葵くんを影とするならあの子は光。そんな感じがする。
「んー。確かにあの子は葵くんとは違うのかな。私葵くんとあんまり話したことないからなんとも言えない」
 そっか、私は彼と何回も話しているけれど、優菜ちゃんは話したことないのか。てっきり話しているものかと思った。逆に私が多すぎるのかもしれない。家も隣だし。
「じゃあ私そろそろ戻るね。どうぞお楽しみに〜。くれぐれも、カッコ悪いとこ見せないようにね」
 からかうようにニヤリと悪い笑みを浮かべた優菜ちゃんは歩いてその場から離れていく。
「もう、優菜ちゃんったら…」
 去っていく彼女に何も言えず、私は独り言という誰の何にもならないものを吐き出した。
 あまり意識しないよう、あえて二人がこっちに来るのを見ないようにしてる。横目で、ギリギリ視界に入るか入らないかのところに目を動かして状況を把握する。そして優菜ちゃんの元へと走っていく一人の男子を見て、私は少し心のネジを締める。遠くに二人が話しているのが見える。私はまだ名前を知らない。優菜ちゃんもあの子としか表現をしていなかった。初対面とはいえ、名前を知らないのはおかしいので、あえて私にいってこなかったということも考えられる。そして足音が大きくなったとき、葵くんは私に投げた。