「すげえ進んだな!」
葵くんの足の回転に合わせることが精一杯になりつつ走りを止める。荒げた息整える間もなく目を輝かせて葵くんは大興奮している。
「そ、そうだね」
私もまた、呼吸をあげている。どのくらい進んだのか気になり、後ろを見てみた。私の視力では、ここから見えるのが男子か女子かの区別もつかない。ただ、さっき声をかけてくれた東先生が2,30メートルくらい遠くに見える。でも10秒と少しくらいしか走ってないのに50メートルくらい進んだのは上出来だと思う。多分私が一人で走るのと同じくらいなのではなかろうか。
「このまま向こうまでいくか」
「ちょっと休憩、ちょうだい」
膝に手をついて、流れる汗もそのままに、ただ必死に息をする。
「一回ほどくぞ」
腰を下ろした葵くんは、紐を解こうと私の足元を動いている。さっき固結びにしなかったので、紐は比較的すぐ取れた。足首に冷たい風があたり、身体が一気に開放された。
「飲み物買ってくる」
片手に紐を持ち、そのまま自販機のある下駄箱まであるき出す。私は疲れて何も言えなかった。でも、周りの人の声と、葵くんが見ていなかったというのもあるけれど、彼は特に違和感を持つ様子なく、私に背中を向け歩いている。
最初は本人だと思ってた。今も思ってる。でも疑わしいところもある。落とし物を拾ってくれたときは、丸みのあって、ものすごく優しかったと思う。今は、刺々しくて、優しくないわけではないけれど、あの一瞬ほどのものは見られなくなった。
「かーおるちゃん」
葵くんの帰りを待っていると、向かいから優菜ちゃんが走ってこっちまで来た。ペアの人が葵くんのいる方向に向かって行っている。
「優菜ちゃん。あれ、ペアの人は?」
「飲み物買いにいったよ。葵くんもでしょ?」
どうやら見ていたらしい。それでなくても来ていそうだと思うけれど。
「さっきすごい早かったね!みんな見てたよ」
なんとなくわかっていたことではあるけれどいざ見られたと思うと少し恥ずかしくなってくる。まあ普通に考えてみれば見られないほうがおかしいような気もするけれど。遠くにみんなが見えるけど、まだ苦戦を強いられているようだ。
「葵くんはどう?」
「どうって?」
私は首を傾げる。
「いい感じ?」
「いい感じって言われても…。別になにもないよ」
「えー?あんなに息ピッタリだったのに?絶対嘘だ!」
葵くんの足の回転に合わせることが精一杯になりつつ走りを止める。荒げた息整える間もなく目を輝かせて葵くんは大興奮している。
「そ、そうだね」
私もまた、呼吸をあげている。どのくらい進んだのか気になり、後ろを見てみた。私の視力では、ここから見えるのが男子か女子かの区別もつかない。ただ、さっき声をかけてくれた東先生が2,30メートルくらい遠くに見える。でも10秒と少しくらいしか走ってないのに50メートルくらい進んだのは上出来だと思う。多分私が一人で走るのと同じくらいなのではなかろうか。
「このまま向こうまでいくか」
「ちょっと休憩、ちょうだい」
膝に手をついて、流れる汗もそのままに、ただ必死に息をする。
「一回ほどくぞ」
腰を下ろした葵くんは、紐を解こうと私の足元を動いている。さっき固結びにしなかったので、紐は比較的すぐ取れた。足首に冷たい風があたり、身体が一気に開放された。
「飲み物買ってくる」
片手に紐を持ち、そのまま自販機のある下駄箱まであるき出す。私は疲れて何も言えなかった。でも、周りの人の声と、葵くんが見ていなかったというのもあるけれど、彼は特に違和感を持つ様子なく、私に背中を向け歩いている。
最初は本人だと思ってた。今も思ってる。でも疑わしいところもある。落とし物を拾ってくれたときは、丸みのあって、ものすごく優しかったと思う。今は、刺々しくて、優しくないわけではないけれど、あの一瞬ほどのものは見られなくなった。
「かーおるちゃん」
葵くんの帰りを待っていると、向かいから優菜ちゃんが走ってこっちまで来た。ペアの人が葵くんのいる方向に向かって行っている。
「優菜ちゃん。あれ、ペアの人は?」
「飲み物買いにいったよ。葵くんもでしょ?」
どうやら見ていたらしい。それでなくても来ていそうだと思うけれど。
「さっきすごい早かったね!みんな見てたよ」
なんとなくわかっていたことではあるけれどいざ見られたと思うと少し恥ずかしくなってくる。まあ普通に考えてみれば見られないほうがおかしいような気もするけれど。遠くにみんなが見えるけど、まだ苦戦を強いられているようだ。
「葵くんはどう?」
「どうって?」
私は首を傾げる。
「いい感じ?」
「いい感じって言われても…。別になにもないよ」
「えー?あんなに息ピッタリだったのに?絶対嘘だ!」


