紐を持った箱を置くと、先生はまた
「ちなみにルールなんやけど、これでグランド半周走るからね」
と付け足した。半周ってことは大体200メートルくらいだろうか。ただでさえ足は遅いのに、二人となると余計に遅くなる。葵くんに言われた通り足引っ張っちゃいそう。
私は紐を取りに行き、葵くんの元へ戻る。葵くんは左足をちょっとだけこっちに伸ばしてきた。私は葵くんの左足に紐を回し、自分の右足を葵くんの左足の隣に置き、そこにも紐を回す。きつくてもゆるくてもいけない、ちょうどいいところを探さなければならないのが難しい。
「あれ、蝶結びでいいんだっけ」
「役立たず。貸してみろ」
私が顔をあげると、葵くんは呆れたように言った。そして目線の高さが同じになるまで腰を下ろしてきて、紐を取った。
「意外と難しいな。もう固結びでもいいかな」
「それだと取れなくなっちゃうよ」
「…じゃあキツめに蝶結びするからな」
私の返事も待たずして、紐をきつく縛り始めた。足首が急に閉まるのを感じる。くるぶし同士が当たって少し痛む。でも葵くんはそんなことおかまいなしに紐を結んでいく。
「こんなんでいっか」
葵くんはぼそっとつぶやいて立ち上がり「走るぞ」と腰をひねり始めた。周りの人も走ってないし、先生も走っていいとは言ってないから、走っていいかわからない。それでも葵くんは走る気満々のようで、体の各所ストレッチをしている。
周りも、紐を結んだペアが増えてきて、どのペアも共通して様子を伺っている。
「なんで走らないんだ」
「たぶん走っていいのかわからないんだと思う」
「言われてなかったっけ」
「たぶん」
曖昧に返事を返し、私もまたキョロキョロと周りを見る。優菜ちゃんペアも私達と同じ状況だ。話しに行こうにも遠いし、第一一心同体状態だから呼吸を合わせることさえ難しい。到底行けそうにない。
「ん?あ、ああ走っていいよ」
みんなの気持ちが通じたらしく、先生は今一番ほしかった言葉をくれた。みんなが少し様子を伺った後、1つのペアを皮切りにして、続々と二人三脚が始まった。
葵くんは私の肩に腕を回してきた。それを見て私も葵くんの少し高い肩に腕を回した。
「行くぞ、せーの」
足を出して次に目に写ったのは土だった。痛みを感じたとき、私は転んだのだとわかった。
「あ、ごめん」
自分が思っているより派手にこけたようで、顔が痛む。
「鼻、トナカイになってるぞ」
「失礼な!しょうがないでしょこけたんだから。」
一度は真面目に謝ったかのように思えたけど、起き上がった私の顔を見るなりくすくすと笑い出した。
「まあな。とりあえずもっかいやろう」
「ちなみにルールなんやけど、これでグランド半周走るからね」
と付け足した。半周ってことは大体200メートルくらいだろうか。ただでさえ足は遅いのに、二人となると余計に遅くなる。葵くんに言われた通り足引っ張っちゃいそう。
私は紐を取りに行き、葵くんの元へ戻る。葵くんは左足をちょっとだけこっちに伸ばしてきた。私は葵くんの左足に紐を回し、自分の右足を葵くんの左足の隣に置き、そこにも紐を回す。きつくてもゆるくてもいけない、ちょうどいいところを探さなければならないのが難しい。
「あれ、蝶結びでいいんだっけ」
「役立たず。貸してみろ」
私が顔をあげると、葵くんは呆れたように言った。そして目線の高さが同じになるまで腰を下ろしてきて、紐を取った。
「意外と難しいな。もう固結びでもいいかな」
「それだと取れなくなっちゃうよ」
「…じゃあキツめに蝶結びするからな」
私の返事も待たずして、紐をきつく縛り始めた。足首が急に閉まるのを感じる。くるぶし同士が当たって少し痛む。でも葵くんはそんなことおかまいなしに紐を結んでいく。
「こんなんでいっか」
葵くんはぼそっとつぶやいて立ち上がり「走るぞ」と腰をひねり始めた。周りの人も走ってないし、先生も走っていいとは言ってないから、走っていいかわからない。それでも葵くんは走る気満々のようで、体の各所ストレッチをしている。
周りも、紐を結んだペアが増えてきて、どのペアも共通して様子を伺っている。
「なんで走らないんだ」
「たぶん走っていいのかわからないんだと思う」
「言われてなかったっけ」
「たぶん」
曖昧に返事を返し、私もまたキョロキョロと周りを見る。優菜ちゃんペアも私達と同じ状況だ。話しに行こうにも遠いし、第一一心同体状態だから呼吸を合わせることさえ難しい。到底行けそうにない。
「ん?あ、ああ走っていいよ」
みんなの気持ちが通じたらしく、先生は今一番ほしかった言葉をくれた。みんなが少し様子を伺った後、1つのペアを皮切りにして、続々と二人三脚が始まった。
葵くんは私の肩に腕を回してきた。それを見て私も葵くんの少し高い肩に腕を回した。
「行くぞ、せーの」
足を出して次に目に写ったのは土だった。痛みを感じたとき、私は転んだのだとわかった。
「あ、ごめん」
自分が思っているより派手にこけたようで、顔が痛む。
「鼻、トナカイになってるぞ」
「失礼な!しょうがないでしょこけたんだから。」
一度は真面目に謝ったかのように思えたけど、起き上がった私の顔を見るなりくすくすと笑い出した。
「まあな。とりあえずもっかいやろう」


