「言い忘れとったけど、二人三脚は男女ペアやからね」
体育祭練習の初日、グランドに集まるやいなや、驚きの内容だった。お昼ごはんを食べたあとで眠たくなるような時間帯に体育は嬉しいような。どうせ一ヶ月休みがあったら忘れてしまうだろうに、それでもいまやる意味はあるのだろうか。
動揺したようにクラスメイトがざわつき出した。
「まあペアって言っても男女であれば誰でもいいんで。好きな人と組んで」
先生、その言い方は語弊があります。その言葉は同性の人と組むときに使えるものであって、異性となれば意味が変わってくる。
どうぞという合図をもらっても優菜ちゃんもわたしもひっついたままだ。他の人も大体そうしてる。
「このクラス、そんな不仲やった?」
両手を腰に置いた先生は完全に観客だ。ここで一組のペアが完成した。その二人は何度か話しているのを見た気がするから、仲良しなのだろう。それを皮切りに、他の人も動き始めた。隣にいた優菜ちゃんもペアを探そうとして、私から離れていった。おどおどしている私は、まだ動けずにいた。
「おい」
葵くんが歩いてきて、私に声をかけた。
「は、はい」
「組むぞ、ペア」
私の話せる男子は葵くんしかいないからわたしも葵くんと組もうと思ってたところだった。でとまさか向こうから来てくれるとは思っていなかった。
「いいの?」
「別に、他に話せる人いないからお前と組んだだけだ」
「ありがと!」
「え」
「頑張ろうね!」
「あ、だな」
このとき、私は初めて葵くんの口元が緩んだ貴重な瞬間を見たかもしれない。
優菜ちゃんは、自分から話しかけてペアを見つけたようだ。彼女の笑顔で釣れない人はいないだろう。
「お前の友達、すげえな」
葵くんも私の目線の先を見た。
「お前とは大違いだ」
私は咄嗟に葵くんを見た。つい頬を膨らませてしまうような感情になってしまったけど、その通り過ぎて何も言えなかった。
「そういう葵くんだって、私しか見つけてないじゃん」
「まあな」
ムキになって打ち返した言葉を、葵くんはサラリと流した。
「足引っ張んなよ」
「あ、葵くんこそ」
これは、仲良しだと言えるのか。仲良しって、もっとこう優しさがあるものじゃないの?私達の関係は、到底仲良しとは程遠い。別に嫌いなわけじゃない。苦手なわけでもないけれど、つい棘のある態度を取ってしまう。葵くんが冷たい態度を取るのもなぜかわからない。
「はい、ペア決まったかな。じゃあ紐置いとくんで取ってください」
体育祭練習の初日、グランドに集まるやいなや、驚きの内容だった。お昼ごはんを食べたあとで眠たくなるような時間帯に体育は嬉しいような。どうせ一ヶ月休みがあったら忘れてしまうだろうに、それでもいまやる意味はあるのだろうか。
動揺したようにクラスメイトがざわつき出した。
「まあペアって言っても男女であれば誰でもいいんで。好きな人と組んで」
先生、その言い方は語弊があります。その言葉は同性の人と組むときに使えるものであって、異性となれば意味が変わってくる。
どうぞという合図をもらっても優菜ちゃんもわたしもひっついたままだ。他の人も大体そうしてる。
「このクラス、そんな不仲やった?」
両手を腰に置いた先生は完全に観客だ。ここで一組のペアが完成した。その二人は何度か話しているのを見た気がするから、仲良しなのだろう。それを皮切りに、他の人も動き始めた。隣にいた優菜ちゃんもペアを探そうとして、私から離れていった。おどおどしている私は、まだ動けずにいた。
「おい」
葵くんが歩いてきて、私に声をかけた。
「は、はい」
「組むぞ、ペア」
私の話せる男子は葵くんしかいないからわたしも葵くんと組もうと思ってたところだった。でとまさか向こうから来てくれるとは思っていなかった。
「いいの?」
「別に、他に話せる人いないからお前と組んだだけだ」
「ありがと!」
「え」
「頑張ろうね!」
「あ、だな」
このとき、私は初めて葵くんの口元が緩んだ貴重な瞬間を見たかもしれない。
優菜ちゃんは、自分から話しかけてペアを見つけたようだ。彼女の笑顔で釣れない人はいないだろう。
「お前の友達、すげえな」
葵くんも私の目線の先を見た。
「お前とは大違いだ」
私は咄嗟に葵くんを見た。つい頬を膨らませてしまうような感情になってしまったけど、その通り過ぎて何も言えなかった。
「そういう葵くんだって、私しか見つけてないじゃん」
「まあな」
ムキになって打ち返した言葉を、葵くんはサラリと流した。
「足引っ張んなよ」
「あ、葵くんこそ」
これは、仲良しだと言えるのか。仲良しって、もっとこう優しさがあるものじゃないの?私達の関係は、到底仲良しとは程遠い。別に嫌いなわけじゃない。苦手なわけでもないけれど、つい棘のある態度を取ってしまう。葵くんが冷たい態度を取るのもなぜかわからない。
「はい、ペア決まったかな。じゃあ紐置いとくんで取ってください」


