「ちょっとまってて」
私は一度部屋に戻って、鞄の中から本を探す。開いたすぐそこにあったので探す必要はなかったに等しい。
「はい」
私はその本を葵くんに渡した。手が届くかどうかギリギリの距離で不安だったけれど、葵くんも手を伸ばしてくれて助かった。背が高くてスラッとしてる葵くん。手足ももちろん長いので私が思いっきり伸ばしたような程度は軽々と届いていた。
「ありがと」
ちょっと枯れたような声だった。葵くんは「じゃあ」と言い姿を消した。扉が閉まる音を確認してから、私も自分の部屋に帰った。少し声が枯れていたのが気になるけど、どうせ考えたところで何もわからないと思ったので何事もなかったようにリビングに降りた。
夏日が激しくなり、クラスの人も全員が半袖になった。電車の中で涼風に吹かれても、駅から学校までの暑さで額には汗がにじむ。私もゆなちゃんも手持ちの扇風機でなんとか暑さをしのいでいる。わたしたちが教室につく頃にはもう数人の人がいて、クーラーが効いている。授業中は涼しくていいのだが、クーラーの効いた教室に慣れていると、廊下に出るときさえも暑さを感じてしまう。かと言ってこの快楽を手放すことはできない。もう一ヶ月も経たないうちに夏休みが来る。夏休みを超えたら多少は涼しい時期になるだろうから、あと少しこの暑さを我慢するだけでいい。あぁ、早く夏終わらないかな。暑い時間というのはやる気もでないし、暑さでだらけてしまう。夏が嫌いなわけじゃない。夏祭りも花火もあるし、海にだって行けるけど、夏は嫌いだ。他の季節は全体的に好いているところが多い。嫌なところが見つからないから好きっていうなんとも単純な理由だけれど。
こんな時でも笑顔でいて、半袖の制服に華奢な体が似合う優菜ちゃんが羨ましい。
「香織ちゃん、種目何にするー?」
そんな彼女に見惚れていたら向こうからこっちへ来てくれた。
「どうしよ。私運動できないよ」
さっき、2学期に行われる体育祭種目が発表された。徒競走、障害物競走、リレー、大玉転がし、二人三脚、台風の目など様々種類があったけれど、実際どれもやりたくないものばっかり。唯一やりたいと思えたのが組別ダンス。赤組、青組、黄組、緑組、白組の5組に分かれて、組ごとにダンスを行うというもの。振り付けからテーマソングまですべて生徒(実行委員会中心)で決めることができる。ダンスやリレーは毎年盛り上がっていると評判らしく、実際先輩の生徒たちも楽しみにしている人は少なくないようだ。運動が得意じゃない私は、できる競技が限られてきそう。当然リレーや徒競走はポイントが高いから早い人が出る。ダンスを除いて一人1つの競技は絶対出ないといけないらしく、私みたいに運動ができない人はあまったものに入ることになりそう。
「男女混合リレーとか大玉転がしならできそうだけど」
「優菜ちゃんなにでるの?」
「私?んー。徒競走とか出てみようかな」
私は一度部屋に戻って、鞄の中から本を探す。開いたすぐそこにあったので探す必要はなかったに等しい。
「はい」
私はその本を葵くんに渡した。手が届くかどうかギリギリの距離で不安だったけれど、葵くんも手を伸ばしてくれて助かった。背が高くてスラッとしてる葵くん。手足ももちろん長いので私が思いっきり伸ばしたような程度は軽々と届いていた。
「ありがと」
ちょっと枯れたような声だった。葵くんは「じゃあ」と言い姿を消した。扉が閉まる音を確認してから、私も自分の部屋に帰った。少し声が枯れていたのが気になるけど、どうせ考えたところで何もわからないと思ったので何事もなかったようにリビングに降りた。
夏日が激しくなり、クラスの人も全員が半袖になった。電車の中で涼風に吹かれても、駅から学校までの暑さで額には汗がにじむ。私もゆなちゃんも手持ちの扇風機でなんとか暑さをしのいでいる。わたしたちが教室につく頃にはもう数人の人がいて、クーラーが効いている。授業中は涼しくていいのだが、クーラーの効いた教室に慣れていると、廊下に出るときさえも暑さを感じてしまう。かと言ってこの快楽を手放すことはできない。もう一ヶ月も経たないうちに夏休みが来る。夏休みを超えたら多少は涼しい時期になるだろうから、あと少しこの暑さを我慢するだけでいい。あぁ、早く夏終わらないかな。暑い時間というのはやる気もでないし、暑さでだらけてしまう。夏が嫌いなわけじゃない。夏祭りも花火もあるし、海にだって行けるけど、夏は嫌いだ。他の季節は全体的に好いているところが多い。嫌なところが見つからないから好きっていうなんとも単純な理由だけれど。
こんな時でも笑顔でいて、半袖の制服に華奢な体が似合う優菜ちゃんが羨ましい。
「香織ちゃん、種目何にするー?」
そんな彼女に見惚れていたら向こうからこっちへ来てくれた。
「どうしよ。私運動できないよ」
さっき、2学期に行われる体育祭種目が発表された。徒競走、障害物競走、リレー、大玉転がし、二人三脚、台風の目など様々種類があったけれど、実際どれもやりたくないものばっかり。唯一やりたいと思えたのが組別ダンス。赤組、青組、黄組、緑組、白組の5組に分かれて、組ごとにダンスを行うというもの。振り付けからテーマソングまですべて生徒(実行委員会中心)で決めることができる。ダンスやリレーは毎年盛り上がっていると評判らしく、実際先輩の生徒たちも楽しみにしている人は少なくないようだ。運動が得意じゃない私は、できる競技が限られてきそう。当然リレーや徒競走はポイントが高いから早い人が出る。ダンスを除いて一人1つの競技は絶対出ないといけないらしく、私みたいに運動ができない人はあまったものに入ることになりそう。
「男女混合リレーとか大玉転がしならできそうだけど」
「優菜ちゃんなにでるの?」
「私?んー。徒競走とか出てみようかな」


