「ごめん」
一言言葉を添えたのを葵くんは返事もせず、聞こえたかどうかの確認さえもできなかった。歩き始めた葵くんの背中を少し見たあと私も彼の背中を歩いた。
「紙、挟んでくるから貸して」
自分たちの教室の前まで来ると葵くんは手を差し出してきた。
「あ、ありがとう」
紙を渡すと、左手に神を持って教室の中に入っていった。雑に教卓に荷物を置いた彼はオレンジ色のファイルにさっきの紙を挟んだ。そして教室から出てきた彼の一言に私は少しきょとんとする。
「ほら、帰るぞ」
「え?どこに?」
反応に困った私は気づくとそんな言葉を発していた。
「家に決まってるだろ。お前学校に泊まってんのか」
葵くんは顔をしかめてそう指摘した。私は驚いている。前はついてくるなっめ言ってた葵くんが、帰るぞなんて言ってるから。まさか彼がそんなことを言うなんて思ってもみなかった。
「ちがうけど」
私は冷静を装ってそう返す。
「なら」
「え、でも」
葵くんは周りを見渡したあと「どうせ隣なんだから、バラバラに帰ってもすぐ会うだろ」と少し声を下げて言う。
「勘違いすんなよ。家が隣ってだけなんだから」
目も合わせず葵くんは階段を降りていった。本当についていっていいのか疑心暗鬼になりつつも、どっちみち帰るので、わたしも必然的に彼についていくようにして階段を降りる。不自然に違う階段から降りるのはおかしいしそれこそ何か思われそう。周りには誰もいないしもし誰かみててもたまたまってことにしておけば。
「今の電車なら誰も同級生いないだろ。そんな距離とんなくていいから」
駅までを歩く道、私は意図的に一定の距離を離して歩いていた。誰かに見つかりたくないのもあるけど、葵くんになにか言われるのが怖かったからっていうのが一番の理由だ。たとえそう思ってたとしても言えないんだけど。
「いいの?隣歩いて」
首を傾げて私は確認する。
「ひっつきすぎないならな」
「べつにそこまでしないよ!」
「いいんじゃねえの?じゃあ」
なんで疑問形かはあえて聞かなかった。葵くん本人のことなのに。
止まっている葵くんの隣に向かって走る。今彼の隣の席は一つ。予約者も私しかいない。その貴重な席に座れたことが嬉しかった。葵くんは隣に来た私を物理的に見下した。近くで見るとやっぱり背高いんだ、葵くん。細くて長い手足が彼を高身長に見せる一つの理由なのかも知れない。長袖だからイマイチわかりづらいけれど、手首をみてみれば、よほど細いということがわかる。細くて背の高い男性は頼りがいがないとされてるし、そう思っている人も多いかもしれない。でも葵くんの隣は守られている感じが良くする。
電車の時間に間に合い、たまたま空いている時間帯だった。葵くんが席に座ったのをみて、隣に行こうかと刹那に悩んだが、その座席の直ぐ側に立っておくことにした。私はこの前買った本を栞通りに開いて本の世界に入り込んだ。
少しして横目で葵くんを見たら、葵くんも本を読んでいた。
「なに」
目があったのを瞬時に本にそらしたけれど葵くんはそれを見逃してくれなかったみたい。
「い、いや、なんの本読んでるのかなって」
目から下を本で隠して私は目をキョロキョロとさせる。ブックカバーしてたら想像しかできない。確か前も同じブックカバーして本を読んでいたような。違う本を挟んでいるのか、同じ本をまだ読み切っていないのか。
一言言葉を添えたのを葵くんは返事もせず、聞こえたかどうかの確認さえもできなかった。歩き始めた葵くんの背中を少し見たあと私も彼の背中を歩いた。
「紙、挟んでくるから貸して」
自分たちの教室の前まで来ると葵くんは手を差し出してきた。
「あ、ありがとう」
紙を渡すと、左手に神を持って教室の中に入っていった。雑に教卓に荷物を置いた彼はオレンジ色のファイルにさっきの紙を挟んだ。そして教室から出てきた彼の一言に私は少しきょとんとする。
「ほら、帰るぞ」
「え?どこに?」
反応に困った私は気づくとそんな言葉を発していた。
「家に決まってるだろ。お前学校に泊まってんのか」
葵くんは顔をしかめてそう指摘した。私は驚いている。前はついてくるなっめ言ってた葵くんが、帰るぞなんて言ってるから。まさか彼がそんなことを言うなんて思ってもみなかった。
「ちがうけど」
私は冷静を装ってそう返す。
「なら」
「え、でも」
葵くんは周りを見渡したあと「どうせ隣なんだから、バラバラに帰ってもすぐ会うだろ」と少し声を下げて言う。
「勘違いすんなよ。家が隣ってだけなんだから」
目も合わせず葵くんは階段を降りていった。本当についていっていいのか疑心暗鬼になりつつも、どっちみち帰るので、わたしも必然的に彼についていくようにして階段を降りる。不自然に違う階段から降りるのはおかしいしそれこそ何か思われそう。周りには誰もいないしもし誰かみててもたまたまってことにしておけば。
「今の電車なら誰も同級生いないだろ。そんな距離とんなくていいから」
駅までを歩く道、私は意図的に一定の距離を離して歩いていた。誰かに見つかりたくないのもあるけど、葵くんになにか言われるのが怖かったからっていうのが一番の理由だ。たとえそう思ってたとしても言えないんだけど。
「いいの?隣歩いて」
首を傾げて私は確認する。
「ひっつきすぎないならな」
「べつにそこまでしないよ!」
「いいんじゃねえの?じゃあ」
なんで疑問形かはあえて聞かなかった。葵くん本人のことなのに。
止まっている葵くんの隣に向かって走る。今彼の隣の席は一つ。予約者も私しかいない。その貴重な席に座れたことが嬉しかった。葵くんは隣に来た私を物理的に見下した。近くで見るとやっぱり背高いんだ、葵くん。細くて長い手足が彼を高身長に見せる一つの理由なのかも知れない。長袖だからイマイチわかりづらいけれど、手首をみてみれば、よほど細いということがわかる。細くて背の高い男性は頼りがいがないとされてるし、そう思っている人も多いかもしれない。でも葵くんの隣は守られている感じが良くする。
電車の時間に間に合い、たまたま空いている時間帯だった。葵くんが席に座ったのをみて、隣に行こうかと刹那に悩んだが、その座席の直ぐ側に立っておくことにした。私はこの前買った本を栞通りに開いて本の世界に入り込んだ。
少しして横目で葵くんを見たら、葵くんも本を読んでいた。
「なに」
目があったのを瞬時に本にそらしたけれど葵くんはそれを見逃してくれなかったみたい。
「い、いや、なんの本読んでるのかなって」
目から下を本で隠して私は目をキョロキョロとさせる。ブックカバーしてたら想像しかできない。確か前も同じブックカバーして本を読んでいたような。違う本を挟んでいるのか、同じ本をまだ読み切っていないのか。


