相思相愛

 素早い動きで体を向けてきた葵くんは、キョロキョロと周りを見ている。つられて、というより急がないと本格的にまずいので私も焦る。
「え、えっと。地図、地図見よ」
 慌てふためく葵くんに私はそう促して私は急いで校内地図を探した。多分どこかの教室に貼ってある。そこまで大きい紙じゃないから見落としがちだ。まだ教室の中に生徒がいるクラスがあるから、そこのクラスにだけ貼ってあったらもうお手上げ。
「あの、2年4組ってどこですか?」
「この上の階にあるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
 私のあたまの中で必死に思考回路を回してたら、葵くんがことを済ませておいてくれた。
「ほら急げ!もう始まんぞ」
「え?あ、ちょっと待って」
 そうだった。これから委員会だった。走って階段を駆け上がる葵くんに必死でついていく。ダッシュしたらもう息が荒くなるのに、葵くんは平気そうだ。なにか運動してるのかな。
「ここだ」
 わたしが来たのを確認してから葵くんは教室に入っていった。私もそれに続いた。幸いにもまだ委員会は始まっていなかった。安心してわたしは肩の力が抜ける。そして葵くんがついた席の隣に私も座った。
 委員会が始まるとペアで一枚のプリントを渡された。図書委員会の目標と当番表、委員長と副委員長の名前、担当の先生の名前までもが書いてあった。
 委員会の内容は単純で、当番の日の昼休みと放課後に図書室に来て、本の貸し借りの手続きを行うというものだった。あとは掃除や本の整理整頓。誰も来ないときも下校時刻まではいないといけないらしい。委員会の最終解散時刻は5時半から6時。その
間はにそこにある本を読んだり勉強したりするのは自由。もし部活とかぶってしまった場合わ顧問の先生と相談するようにと言われた。でも私は部活に入ってないからこの話は関係ない。大体一週間か二週間に一回まわってくるらしい。そして委員長は「当番の日は必ず二人で行うこと」と最後に付け足して委員会が終わった。表を見てみるとわたしたちの当番は来週だった。説明に「一年生は最初の数回教えながら」と書いてある。それを見たことで安心して肩が降りる。
「ファイル持ってきてないのか」
 隣の葵くんが筆箱を片付けながら私の机を覗いてる。
「ファイル?持ってきてないけど」
 必死にため息をつくのを耐えたのか呆れてるのか、頭をかき乱している。
「教室行くぞ」
 荷物を雑に肩に持ち歩きはじめた。なにも荷物の準備をしていない私は「ちょちょっとまってよ」と鞄に荷物を急いで詰める。
「早くしろ。置いてくぞ」
 蔑むような目で見られているとわかる。彼はそう言いつつも教室を出る前のところでちゃんと待ってくれている。私は誰のものかもわからない机の中を何故か確認して鞄を背負った。