相思相愛

「香織ちゃんの相方よ相方。あの子前とはなんか言ってた子じゃないの?」
 そういえばその話何回かしたような気がする。
「言ってたかな、覚えてない」
 無駄かもしれないけれどとぼけてみた。目線を変えると疑われてしまうから目を細めて首を傾げた。ちゃんと思いだそうとしている演技を見せた。
「そうだったっけ?あれ、気のせいかな」
 良かった。覚えてないみたい。私は心のなかで安堵の息を吐く。
「私自分のペアの人見るの忘れちゃったんだよね」
「えー?誰かわからないの?」
 あんなにいい人見つけるんだ!とか言ってた割には、案外興味がないのかもしれない。
 私が思わず声が大きくなったのを「うん」と思い出そうともせずに頷いてきた。
「まあきっといい人だよね」
「そうだといいね」
 優菜ちゃんがウインクしてきたのを私は言葉で返した。
「優しい人がいいな〜」
 優菜ちゃんが手を繋ぎ星に願いを叶えるがごとくの体制だ。
 私は秘密を持っている。誰かに話すなんてことはもちろんだめだし、行動でバレてしまうのも良くない。幸いにも私と葵くんは今はあまり仲良くない。少し寂しいけれど、彼の態度がそれを物語っている。だから逆に言えば、これ以上距離を縮めたりしなければ優菜ちゃんにも他の人にも何も変化を感じ取られない。第一図書室は静かに勉強したり本を読むところ。わたしたちは言葉を発する回数が片手で収まることだって想像できるわけだし、まずクラスメイトが入ってくるのかと言われてみればわからないからそこまで心配する必要もないのかもしれない。それによって出る被害もゼロに等しい。
「でもこのクラス悪い人いなさそうじゃない?」
 手を解いた優菜ちゃんがまえのめりになる。その目は嬉しそうだった。
「確かに。みんないい人そうだよね」
 まだほとんど男子と話をしてないけれど、男子同士の会話を盗み聞きするときがたまにあって、その時の会話の内容や口調は優しさが溢れ出ている。無論その場ののりやツッコむときに強い口調にはなるけれど、多分心の中は優しさが入ってる。
 放課後、紙に書いてある通りの場所に行った。図書室かなとも思ったけれど普通の教室でちょっとがっかり。葵くんはというと私の少し後ろを歩いている。意図的に距離を縮めていないというのは歩く速度でわかる。私も気まずいから無意識に歩くのが速くなる。
 確か2年4組って書いてあった。私は気づくのがおそすぎたのかもしれない。明らかにここは3年生のプレートが貼ってある。たった今私は3年4組のプレートの目の前に立っている。
「俺ら2年4組だよな?ここって」
 私の隣に立って、葵くんがネームプレートをじっと見ている。
「違うよねここ」
「見たらわかるだろ」
 蔑むように言われて私は「そうだよね」とご機嫌を取るようなことを言った。それより、速く移動したほうがいい。委員会の時間に間に合うかわからない。今何時なんだろ。
「おい、2年4組何階だ」