相思相愛

「終わったー。やっと終わったー!」
 後ろから肩の力を抜いているような声がした。
「長かったね」
 5月の終わり頃。高校に入って初めてのテストがあった。中学の時から教科数は2倍になって、その時点で中学校のときの期末試験の教科数を超えている。初めてっていうこともあってかそこそこ勉強も頑張ってできた。出来がどうかはわからないけど。
「そうだ香織ちゃん。帰りスタバ寄ってこうよ」
「いいね!高校生って感じする」  
 よく漫画やドラマで目にする高校生らしいことを私はまだしたことがない。だからそういうことは憧れでもあった。小さな子みたいに笑顔を作り私はそう答えた。
「でも思ったよりは簡単じゃなかった?」
「そう?あ、社会は2つともそこそこできたよ」
 帰り道、約束通りにスタバに来た。朝日駅の中にあるところ。いつも目にはしていたけれど私はここに、そもそもスタバに来たのが初めてだった。だから注文の仕方やオススメのメニューを優菜ちゃんに聞いた。初めてスタバに来たことを言ったら、ツチノコでも発見したかのように驚いていた。どうやら現代人でスタバに行ったことがない人は珍しいらしい。
 そして今、今までのテストの振り返りをしているところだ。
「ほんと?じゃあ勝負しようよ。私もそこそこ自信あるから」
「そう言われると自信なくなってきちゃった…」 
「なにそれ」
 私が肩をすくめて縮こまると優菜ちゃんは笑った。
「逆に一番何が自信あるの?」
「んー。好きなのは国語だから、現代文とかになるのかな」
 私は本をよく読む。いろんなジャンルを読むとかではなく恋愛系や感動する話とかばっかり。恋愛系を読んでいるからか、つい現実でもそんな出会いをがあるのではないかと期待してしまう。
「国語か〜。それは負けるかも」
「じゃあ勝負だね!」
 今度は私の番だと言わんばかりに両腰に手を当てた。ほんと自分でも怖いくらいに文系だから、これから理科や数学についていけるか心配。
「なにそれズルいー。社会はしないって言ったのに」
「じゃあ両方で勝負しようよ」
 私の提案に首を傾げたかと思いきや「望むとこ!」とノリノリみたい。今まで少し話してきたけれど、もう私より頭のいいことくらいわかる。多分真っ向勝負ではこっちが負ける。
 帰り道に、学校で読む本を買いに来た。優菜ちゃんの電車の時間的に席を立たざるを得なかったのだ。
 駅前の本屋に来たのは初めて。まだ新しい空気が漂っている。2階にはカフェスペースもあって、今度はここに優菜ちゃんときたいだなんておもっていた。
 この前恋愛系読んだし、今回は別のにしようかな。でもこの本面白そう。『泣ける話』私弱いんだよね。
 結局その気になった本をレジに通した。あらすじからストーリーを想像しつつ帰路を歩く。