2階の自分の部屋は、小さなベランダにつながっている。荷物をおいてすぐ、私はベランダに出た。
左隣には葵くんの家がある。それも人の一人分あるかないかくらいの距離。普通の声で話ができる。ものすごく複雑な気持ちが入り混じる。私は意識的に左だけを見ないようにしてベランダからの景色をわけもなく見た。
どうしよう。うかつに洗濯物とか干したら葵くんに見られるかも。でも私の私物には興味ないか。しかと、私のしらない葵くんだったから、もう無関係の人なんだ。私から関わることなんて金輪際ない。
「香織?ちょっと」
後ろからお母さんが覗き込んできて、私がそれに気づくと手招きで呼び寄せてきた。
お母さんについて階段を降りると、玄関に人がいた。どうやらお客さんが来たみたいだ。
「あら、香織ちゃん?大きくなったわね」
お母さんと同年代くらいのおばちゃんだった。手招きっぽい仕草で私にそう言ってきたけれど、私はこの人が誰だがピンときていない。
「覚えてる?ほら、葵って覚えてるでしょ?」
「え?」
嘘、この人、もしかして葵くんのお母さん?
「幼稚園ぶりね〜。元気そうで良かったわ」
「しょうちゃんも元気そうじゃないのー」
幼稚園ぶり。やっぱり人違いじゃなかったのかな。しょうちゃん?は葵くんのお母さんの名前かな。?
「隣りに越して来たんですって」
それはもう、決定打みたいなものだ。私の家は角。隣といえば左隣、つまり葵くんの家しかない。
「そうなんだ」
上の空な返事しかできない。別に駅でハンカチを拾ってもらったとか、たまたま帰り路が被ってたまたま一緒に帰ってきたなんて言わなくてもいいか。恥ずかしいし、これ以上話の銃口を向けられるのはなんだか困る。
「そう、さっきここの表札見て回ってたら、見たことある名字があってね。それで来てみたの」
よく名字だけで来ようなんて思えたものだ。葵くんのあの性格反面、お母さんの方は賑やかな人っぽい。
「よくわかったわね私らのこと」
「これが女の勘ってやつよ」
葵くんのお母さんが力こぶをポンポンと叩いた。お母さんはよく笑ってる。ジェネレーションギャップなのか私のこの状況だからか、私は全く笑えなかった。
左隣には葵くんの家がある。それも人の一人分あるかないかくらいの距離。普通の声で話ができる。ものすごく複雑な気持ちが入り混じる。私は意識的に左だけを見ないようにしてベランダからの景色をわけもなく見た。
どうしよう。うかつに洗濯物とか干したら葵くんに見られるかも。でも私の私物には興味ないか。しかと、私のしらない葵くんだったから、もう無関係の人なんだ。私から関わることなんて金輪際ない。
「香織?ちょっと」
後ろからお母さんが覗き込んできて、私がそれに気づくと手招きで呼び寄せてきた。
お母さんについて階段を降りると、玄関に人がいた。どうやらお客さんが来たみたいだ。
「あら、香織ちゃん?大きくなったわね」
お母さんと同年代くらいのおばちゃんだった。手招きっぽい仕草で私にそう言ってきたけれど、私はこの人が誰だがピンときていない。
「覚えてる?ほら、葵って覚えてるでしょ?」
「え?」
嘘、この人、もしかして葵くんのお母さん?
「幼稚園ぶりね〜。元気そうで良かったわ」
「しょうちゃんも元気そうじゃないのー」
幼稚園ぶり。やっぱり人違いじゃなかったのかな。しょうちゃん?は葵くんのお母さんの名前かな。?
「隣りに越して来たんですって」
それはもう、決定打みたいなものだ。私の家は角。隣といえば左隣、つまり葵くんの家しかない。
「そうなんだ」
上の空な返事しかできない。別に駅でハンカチを拾ってもらったとか、たまたま帰り路が被ってたまたま一緒に帰ってきたなんて言わなくてもいいか。恥ずかしいし、これ以上話の銃口を向けられるのはなんだか困る。
「そう、さっきここの表札見て回ってたら、見たことある名字があってね。それで来てみたの」
よく名字だけで来ようなんて思えたものだ。葵くんのあの性格反面、お母さんの方は賑やかな人っぽい。
「よくわかったわね私らのこと」
「これが女の勘ってやつよ」
葵くんのお母さんが力こぶをポンポンと叩いた。お母さんはよく笑ってる。ジェネレーションギャップなのか私のこの状況だからか、私は全く笑えなかった。


