『他の吸い込まれた子たちはスマホ置いていってるの?』
「他のみんなは……」

 明かりはついていないけれど、月明かりで意外と室内全体がはっきり見えている。

 辺りを見回してみたけれど、高瀬くんのもの以外の鞄やスマホは見当たらない。
 そういえば東条先輩と蓮見くんは鞄持ったまま吸い込まれた気がする。先生は何も持っていなかったから、荷物は職員室辺りに置きっぱなしかな? 

「多分、吸い込まれた生徒ふたりのは、鞄もスマホも見当たらないから持っていったと思います。先生の荷物は職員室辺り?にあると思います」

『そっか、先生はポケットとかにスマホ入れてそうだね。吸い込まれた子たちも持ってる感じなら、自分たちで連絡しそうだね』

「そんなものですかね?」

 異次元って、スマホ使えるのかな?

『うん、大丈夫。きっと大丈夫。とりあえず朝まで様子をみよう』

「はい、分かりました。色々とありがとうございます」

 電話を切った。

 高瀬くんのお兄さんの、なんというか大人の余裕みたいな感じで気持ちが落ち着いた。

「私たちはどうしよう」
「何も出来ることなさそうだから、それぞれ家に帰って寝よ?」
「でも……」
「嫌なら、一緒にここで寝る? 不安ならずっと、ぎゅっとしていてあげるよ」
「な、何を言っているの珠洲島くん!」
「ははっ! 冗談だよ。家のベッドが一番ふかふかで眠れるから帰って寝たいな。僕たちはきちんと眠って……明日の朝、早めにここに来ようよ」
「うん、そうだね」

 家に帰ろうと旧校舎から出た時、先生から連絡が来た。

『明日の朝、帰れるから心配しないでね』って。

 異次元からでも連絡出来るんだ……。
 というか、本当に異次元に連れていかれたのかな。

 真実は後に知ることになる。