︎ ︎「誰だ?」
 強めな口調で東条先輩が言う。
 もう隠れられないなぁ。

 仕方ない……。
 私は布から出て、立ち上がった。

「どうしてここにいるんだ?」
 蓮見くんは眉間にしわを寄せながら言う。

「私も、分からないの」

 すぐばれそうな嘘をついてしまった。
 どうしよう、事実を伝えるべきか伝えないべきか。

「いや、分からないわけないだろう……もしかして、仲直りさせようみたいに考えて、東条と俺を閉じ込めようとした?」

「……はい、そうです。その通りです。ごめんなさい」

 蓮見くんの瞳は、嘘を見透かしそうで、これ以上隠し通すことは出来ない気がして。正直に言った。

「でもね、1時間後に先生戻ってきて鍵を開けてくれる予定だから」

 東条先輩は、私の話を聞かないで、窓を眺めだした。どうやら脱出方法を考えているみたい。突然彼が窓を開けて飛び降りようとした。

「やめろよ! ここは2階だぞ。飛び降りてわざわざ怪我しなくても、1時間後に鍵開くらしいぞ」

 蓮見くんが東条先輩の腕を掴み、止めようとした。

「そうなんだ……」

 東条先輩が窓を閉めて、窓際の席に座った。

 私はホコリをさっき吸ったせいか、鼻水が。目も痒くなってきた。でも、今はそれどころではない。せっかくふたりが一緒にいる機会を逃したくはない。

「東条先輩は、なんで校則を守らないようになったんですか? 中学の時は、きっちりしていたって聞きました」