私は毎日、蓮見くんに話しかけることにした。一週間ぐらい過ぎたある朝。彼はいつものように制服の着方が乱れている生徒を注意していた。

 蓮見くんが「きちんと一番上のボタンまでしろって言ってるだろ?」と注意すると相手は怒りだした。何やら喧嘩になりそうで険悪な雰囲気。

 そのタイミングで東条先輩も登校してきた。

「おい、ここで喧嘩はやめろ!」

 蓮見くんに注意されて怒っていた生徒に、東条先輩が言った。
「はい! 辞めます! というか喧嘩なんてしません! すみませんでした!」
 相手の人は深くお辞儀をしてすぐに去っていった。

「あいつ、俺らとは別のチームに所属してるやつだわ」

 えっ? 違うチームの人もあんなにひょいと従わせちゃうの? 凄い!

「おまえも、どうせいつもみたいな言い方したんだろ? 喧嘩弱いんだからもっと言い方を……」
「余計なお世話だ! それよりおまえもその制服の着方直せ!」
 東条くんの言葉を遮るように蓮見くんが言った。
「……」
 無言になった東条先輩は、そのまま校舎の中に向かっていった。
「はぁ、からまれるの怖かったな」
 蓮見くんがひっそり呟いた。 

 多分私には聞こえないように呟いたんだろうけど、聞こえちゃった。

 いち子からふたりが仲悪い原因を訊いていたけれど、私は単刀直入に直接訊ねてみた。

「ねぇ、どうして東条先輩のこと、嫌いなの?」

 すると彼は、こう言った。