「どうしたの? 大丈夫?」

 彼が訊いてきた。

「今、私に……?」

「ん? 僕、なんかした?」

 ふわふわとした口調で彼は言った。

 今のこと、覚えてないのかな?
 私にとっては重大な事件なのに。

「ううん、なんでもない!」

 直接、口にするのも恥ずかしかったし、覚えていないのなら言わなくてもいいかな?って思って、黙っていることにした。

 そういえば、さっき、私を猫と間違えたっぽいな。私にあんな愛情深い顔をして……。

「ねぇ、珠洲島くんって、もしかして猫好きなの?」

「え? うん、だいすきだよ!」

 笑顔でだいすきって言われて、私に宛てた言葉じゃないけれど、ドキッとしちゃった。

「そうなんだ、私も好き!」
「可愛いよね!」

 そう言うと珠洲島くんは急に無言になり、スマホをいじりだした。

 何やってるんだろう?
 
 そして黙って画面を見せてきた。

「わぁ! めちゃくちゃ可愛い!」

 白い猫がごろんとして日向ぼっこをしている写真だった。

「いつも僕に会いに来てくれる子なの」

 猫の話をする時の珠洲島くんは幸せそうな顔をしている。

「いつも会いに? どこにいる子なの?」

「この子はね、がっこ……、いや、秘密!」

 彼は人差し指を自分の口元にやり、可愛くウインクをした。

 猫の場所、気になるけれど、珠洲島くんにこんな可愛くウインクされたら、もう何も訊けないよ!!