いち子に教えてもらった場所に行くと、駐車場の、ここから見たら木の陰の場所にちょうど隠れるように、黒い車がひっそり停まっていた。

 あの車かなぁ?

 恐る恐る近づいてみる。

 運転席がちらっと見えた。
 多分マネージャーさんかな?って思われる人は、その席で眠っている様子だった。

「何か、俺の車に用?」

 突然後ろから声がして、私はビクッとした。振り向くと、高瀬帷くんがいた。

「あ、あの……はい…」

 いきなり本人登場!
 どうしよう。

 近くで見る彼が物凄くキラキラしすぎていて、話すのがドキドキする。

 映画部に入りませんか?って、その一言さえも言えないよ……。あたふたしちゃう。

 その時、彼は優しく言った。

「落ち着いて! 深呼吸、一緒にしよう! はい、吸ってー、はいてー……」

 えっ? 何? 

 私、今、あのモデルの高瀬帷くんと一緒に、深呼吸しているよ?

 あぁ、頭がクラクラしちゃう!
 私はドキドキしすぎて倒れそうになった。

「大丈夫?」

 よろっと倒れそうになった私を彼が支えてくれた。

「はい、大丈夫です……」

 彼は辺りを見回している。

「とりあえず、ここじゃあなんだから、車に乗って?」