仕事が終わって、約束の場所に行くと、

「岡山!」

仁科君が笑って、手を振ってきた。

「あたし、明日、早番だから早く帰りたいから手短にね」

席について、冷たく言うが、仁科君は気にしてないようだ。

「あのさ、岡山、俺と結婚してくれないか…?」

「え~!」

「岡山、声が大きい」

「ごめん。
てか、なんで?」

あたしの言葉に、仁科君は頬を赤くした。

「そんなの、好きだからに決まってるだろ」

「…嬉しいけど、あたし、親しい男友だちがいて、結婚したとしても会うのは止めないよ?
それでもいいの?」

「いいよ、友だちなんだろ?」

「…うん」

今はセフレとは言わない方がいいみたいだ。

こうして、30歳を目前にした春、あたしは同僚の仁科君と、付き合いをすっ飛ばし、結婚する事になった‐。