はぁ……それにしてもうるさいわね。ていうか、何なの? この流れる様なテンプレ展開は。
 最近読んだ恋愛小説の中で、全く同じ展開を何度か見たわ。流行ってるのこれ? 私ってば、流行りに乗っかっちゃったわけ?
 ……ま、いいや。帰ろ。

 私が再び会場を後にしようとしたその時――

「カリナ! ちょっと待て!」
「カリナ嬢! お待ちください!」

 再び呼び止められてしまった。しかも一人増えてる。
 どうやら、この二人をどうにか納得させないと、この会場から出る事は不可能な様ね。
 私は渾身の力を込めて深い溜息をつくと、ロバート殿下の正面に立ち、真剣な表情で真っすぐ向き合った。

「ロバート殿下。私はこれまでに貴方を愛した事は一度もありません。この婚約も、貴方が強引に結んだようなもの。一度は不本意ながらも仕方なく受け入れましたが、二度目はありません。どうか自分の言葉には責任をお持ちください。それに貴方にはスーランという素敵な女性がいるではありませんか。どうか、彼女を裏切る様な発言は(刺される前に)お慎み下さい」
「う……うぐぅ」

 悔しそうに口を噤むロバート殿下は、とりあえず納得はしているみたい。
 それなら次はこの人ね。

「アストロス王子」

 その名を呼ぶと、彼は嬉しそうに顔をほころばせた。
 ……言いづらいな。だけど、ちゃんと言ってあげないと。

「申し訳ありませんが、貴方と婚約は出来ません」
「……! それは、まだ貴方が私の事を知らないというだけではありませんか? どうか私にチャンスを――」
「いえ、だいたい分かりました」
「え……?」