「はいっ、それでは、雲の色や種類の違いが分かる人、居るかな?」

 二時間目、理科。
 担任の望月(もちづき)先生が、フレンドリーに問い掛けてくる。
 生徒達に人気のある、若い男の先生だ。

 私は授業よりも、先生の後ろにある時計の方が気になっていた。
 間もなく10時! 
 マートとの約束の時間だ。

「今日の、空は〜」

 先生が、窓の向こうに目を向けた。
 雲に関心のない生徒たちは、ほとんど話を聞いていない。

「入道雲がっ……」

 先生の動きが止まった。
 正門のすぐ隣りに立っている、大きな木を見つめている。

 私も、先生の視線を辿る……。

(あっ、あの七色の光……。マートだ!)