「そんな風に言ってもらえるなんて、「先生」としては光栄です。でもミノリさんの未来はまだ始まったばかり。僕はそのお手伝いをしたに過ぎませんから……どうか……大学での新しい生活を充実させてくださいね」

「うん。折角言葉を知る楽しさを教えてもらったのだもの! ワタシ、頑張る!!」

 そう奮起するワタシの声を聴いたハクアくんは、おもむろにこちらに姿勢を向けて、ワタシの目の前まで近寄った。

 いつもは学習机に並べられた椅子に腰掛け、左側から見下ろしてくれていた柔らかな(おもて)

 久方振りに正面の視界が占領されて、銀ブチメガネ越しの涼やかな視線に一瞬ドキッとしてしまった。

「貴女の中身はまだ僕の知識……ですからどうか、四年の歳月で新たな才知を得てください。卒業したらまた是非此処で……その日を楽しみにお待ちしています」

「え? あ、ううん、ワタシ時々帰省するから、その時また──」

 ──会いに来るよ──

 そう言いかけたワタシの額に、ハクアくんは優しくそっとキスをした──。