だが、私たちは次期当主であり、守護者だ。
そこからは私、琥珀、朱も加わり、妖は私たちに押される展開になった。
「くそっ!くそぉおおおおお!」
悔しそうな妖の叫び声が聞こえる。
手数が多い上にその手数一つ一つが強いものだが、こちらには人数的なアドバンテージがあるのでそれで追い込まれることはない。
後少し私たちの誰かが妖の首を落とせると確信した時だった。
「琥珀くん危ない!」
姫巫女が突然叫んで琥珀の元へ向かう。
確かに手数の多い妖の攻撃は琥珀に向かっていた。
だが、危ないものではない。
十分琥珀なら対処のできるものだった。
それでも姫巫女から見たら琥珀に危険が迫っているように見えたのだろう。
駆け出した姫巫女こそがここにいる誰よりも危険な状態になってしまった。
「死ねぇえええええ!」
断末魔のような妖の叫び声が聞こえる。
この機を逃さまいと妖から放たれた氷は今までのものの中で何よりも早く強力なものだった。
火事場の馬鹿力というやつか。
「…っ」
ダメだ。
このままだと姫巫女に攻撃が当たる。
怪我だけで終わればいいが、姫巫女の弱さなら最悪死んでしまう。
私は炎を出すよりも早く姫巫女の前に飛び出していた。
もしこの氷が私の心臓を貫いたなら私はきっと死んでしまうだろう。
今このタイミングで死ぬなんて心残りがありすぎる。
炎で溶かせばよかった。
そう思った時だった。
「紅!」
ドンっ!と誰かが私の体を突き飛ばす。
必死に私の名前を呼んだ誰かとは蒼だった。
「蒼!」
私は突き飛ばされながらも必死で蒼に手を伸ばす。
炎で氷を溶かす!
だが、私の力が及ぶ前に氷が蒼の左肩を貫いた。
「あ、蒼!」
すぐに受け身を取って蒼に駆け寄る。
「大丈夫、ちょっといいの食らっちゃったけど問題ない…」
「大丈夫って…。出血酷いよ!」
笑顔だが苦しそうに肩を抑える蒼に私から血の気が引いていく。
致命傷ではないが、辛いことには違いないだろう。
もう少し下だったら心臓を貫かれたのは私ではなく蒼だった。
すぐに応急処置をしなければ。
救命隊も必要だ。
私は自分の上着を脱いで蒼の傷に当てた。



