2度目の人生で世界を救おうとする話。後編





「紅?」



私の変化に気づいた蒼が不思議そうに私の名前を呼ぶ。
蒼たちはまだ気づいていないのか。

それから数秒後、急に強い妖の気配がしたかと思うとこちらに目掛けて勢いよく水が飛んできた。
集中していた私はそれに炎で反応する。
私たちを守るようにできた炎の壁はその勢いのまま水を蒸発させた。



「きゃあああ!!!」



姫巫女の悲鳴がこの誰もいない岩陰に響く。



「こんなところに姫巫女がいるとはラッキーだな」



そして海から海水を滴らせながら大きなスライムのような妖が現れた。

人型ではない。ならば強いといっても龍たちのような強さはないはずだ。



「いきなり現れて何しに来たの」

「それはもちろん忌々しいその女を殺す為だ。その女さえいなければ俺たち妖の時代がやってくる」



私の問いかけに妖が当然だと主張する。
あまり妖を殺したくはないが、この妖は殺す対象になるかもしれない。
それにこれだけ守護者たちが集まっていると殺さないという選択の方が難しい。



「死ね!姫巫女!」



考えていると妖は姫巫女に向かって鋭い氷を飛ばした。
それを蒼が風で逸らす。
ビュンビュンと飛んでくる氷に蒼は負けることなくそれを逸らし続けた。



「隙あり!」



姫巫女だけに攻撃をする妖に武が突っ込み、氷で首を切断しようとする。
だが…



「…っ」



武は妖が作った大きな水の玉によって吹っ飛ばされた。



「チッ」



吹っ飛ばされた武だが、そのまま地面にぶつかることなく、綺麗に受け身を取って、妖に舌打ちをする。



「バカな人間め。そう簡単にお前らの攻撃なんて俺が喰らうものか」



そんな武に妖は蒼たちに攻撃を続けながらも呆れたように呟いた。