「もう大丈夫ですよ」
姫巫女の様子を伺いながら蒼は優しく姫巫女に声をかける。
そしてその優しげな瞳は隣にいた私にも向けられた。
「紅も怖かったよね。ごめんね」
「いや、俺は大丈夫だよ。むしろ姫巫女様を守る役目を上手く果たせなくて申し訳ないのは俺の方だし」
あの事態は私の力不足によるものだ。
もっと上手く立ち回れば姫巫女を怖がらせる前に彼らを退けることができたはず。
表には出さないが落ち込む私を見て、蒼は私の頭に触れた。
「いや、紅はよく頑張ったよ。男でもこんなに可愛いんだもん。あんなこと言われても仕方ないよ」
にっこりと蒼が笑う。
「…もっとああいうタイプにも対応できるようにします」
「その必要はないよ。ああいうのは僕が追い払うから」
「いや、でもいつも一緒にいる訳じゃないから自分で追い払えるようにしないと」
「なんで?いつも一緒にいればいいじゃん」
蒼の言動に呆れていると蒼は笑顔だが、真剣な目で私を見つめた。
冗談のように聞こえるが、冗談ではないらしい。
何を言っているんだ、蒼は。
「うっうぅ」
私たちが変な会話をしていると蒼に抱きついていた姫巫女が突然泣き始めた。
今まで泣くのを我慢していたのか、それは本当に突然だった。
「姫巫女様、もう怖くありませんよ」
そんな姫巫女の背中を蒼は宥めるように優しく撫でた。
そしてそれは買い出しに行った琥珀たちが帰ってくるまで続いた。



