「姫巫女様、あまり僕から離れすぎないでください」
周りからの熱い視線を浴びている姫巫女に駆け寄ったのは今日の特別外出中の姫巫女の護衛をもちろん任された水着姿の蒼だ。
長袖の上着をはためかし、姫巫女の側に駆け寄る蒼はその美しさもあり、まるで王子様のようだった。
2人の存在は海に現れた姫と王子だ。
「あー。彼氏持ちか…」
「あれには勝てねぇ」
周りで〝姫巫女の可愛らしさ〟にざわついていた男たちも蒼の登場により、蜘蛛の子のように散っていく。
蒼が姫巫女の護衛をする、つまり、他の守護者は自由である。
「兄さん、日焼け止めは塗った?」
蒼と姫巫女を何となく見ていると、私の隣にいた朱が真面目な顔で私にそう確認してきた。
「もちろん塗ったよ。日焼け怖いし」
「ちゃんとだよ?塗り忘れもない?」
「ないと思うけど…」
「本当?」
はっきりとしない私に疑い深い視線を朱がぶつける。
そ、そんなに疑わなくても。
「兄さん、できたって言ってもできてないところがあるから心配だよ。僕が塗り直してもいい?」
「いや!いいから!そもそも俺、全身ラッシュで上着まで着ているだよ!?ほとんど肌の露出ないよ!?」
心配そうな朱の提案を私は慌ててお断りする。
それでも朱は心配…ではなく、不満げに「えー」と言って私を大きな瞳で見つめた。
み、見ないで!私は朱のその大きなクリクリの目に弱いんだから!
「朱。紅は大丈夫だ」
日焼け止めを塗り直すか塗り直さないか問題で朱と揉めていると、琥珀が無表情で私たちの会話に入ってきた。
救世主の登場だ。
「俺もそう思う」
続けてまたまた救世主の登場だ。
今度は武が呆れたように私たちの会話に入ってきた。
「ね!ほら見て!3対1!」
私はそんな2人に心から感謝してもう一度不満そうな朱に大きく手を広げて主張する。
塗り直しは不必要だと。
「…わかったよ」
不満そうだったが、朱はやっと塗り直しは不要だと納得してくれた。



